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「目立たなかった短距離メダリスト」
高平慎士がクールに振り返る競技人生 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 写真●ロイター/アフロphoto by Reuters/AFLO

――北京の銅メダルは、チームを引っ張っていく上で重荷にはなりませんでしたか。

「もちろん重荷はありました。日本では『メダリスト=人格者』という見方もされるので(笑)。その点に関しては、淡々とアベレージを維持して(自分の中で)自己啓発本のようなものを作ってきた選手なので問題なかったんですが、世間の方々から見たらぜんぜん面白くない選手だったでしょうね。競技人生の中でドラマがあったほうが面白味も出てきますし。

 でも、『4年に一度のチャンスをどう生かすか』に特化した場合には、浮き沈みのないアスリートでいたほうが、チャンスが転がり込んでくる可能性が高いという考えは変わりませんでした。五輪本番に向けて自分のアベレージを世界のトップに近づけることが、私の競技スタイルやキャリア形成につながると思っていましたから」

――高平さんの200mのベストは20秒22ですが、それを確実に出せるようにと。 

「そうですね。世界大会でも予選で20秒2台を出せれば決勝に残れることが多いので、それをコンスタントに出すことが私の目標でした。私は100mも走っていましたが、日本記録に近いタイムでも決勝進出は厳しいので、より世界のトップに近い200mを選んだんです。ただ、ものすごく現実感がある目標を立てたことで、やりづらさはありましたね。表彰台に立つためにどうやって試合をするかと考えたときに、やるべきことが明確に見えすぎている部分があったので......。今になって思えば、そこにもうちょっと遊びが入ったほうが、自分の力をより引き出せたのかもしれないと思うこともあります」

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