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「目立たなかった短距離メダリスト」
高平慎士がクールに振り返る競技人生 (6ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 写真●ロイター/アフロphoto by Reuters/AFLO

――北京五輪後の09年世界選手権では江里口匡史選手や藤光謙司選手もメンバー入りしましたが、飯塚翔太選手や山縣亮太選手という新世代の選手が出てきたロンドン五輪まで、高平選手が代表入りしたという功績は大きかったと思います。

「特にロンドン五輪の頃は、同じ富士通陸上部の塚原(直貴)が調子を落としていましたし、北京五輪のリレーメンバーが誰も残らないわけにはいかないと思っていたので、代表になれてちょっとホッとした部分はありました。チームとしても飯塚選手は学生でしたが、物事に真摯に向き合える性格でしたし、江里口選手も大先輩の末續さんを見ていたからか、いろんなことに気遣いができる選手だと思いました。その他の選手も含め、このときも素晴らしいメンバー構成だったと思っています。

 でも、私個人としては、そもそも代表選考の日本選手権で飯塚選手や同じチームの高瀬慧には勝てないなと思っていたので、1カ月前くらいから『どうやって五輪へ行くか』という考えに切り換えました。結果的には、無事に200mと400mのリレーメンバーに選ばれましたが......。日本選手権後のミックスゾーンで高橋尚子さんと2人で泣きながら話をするくらい、すごく苦しい戦いだったことを今でも鮮明に覚えています」

(9秒台に突入した日本短距離を語る後編につづく)

高平慎士

1984年7月18日生まれ。北海道旭川市出身。旭川大学高校から順天堂大学に進み、2004年アテネ五輪に出場。2007年春に富士通に入社し、2008年の北京五輪4×100mリレーで銅メダルを獲得した。2012年ロンドン五輪にも出場するなど、日本男子の短距離界をけん引し、2017年9月23日の全日本実業団対抗選手権を最後に引退した。

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