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「目立たなかった短距離メダリスト」
高平慎士がクールに振り返る競技人生 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 写真●ロイター/アフロphoto by Reuters/AFLO

――為末選手のように、勝負どころで120%以上の力を出すようなタイプではなかったということでしょうか。

「"計算をして臨む"という点では、私も為末さんと似ていると思うんですけど、ゾーンへの入り方がわからなかったというか......。為末さんは"計算"もできて、かつ土壇場ではギャンブルをして爆発力を引き出せるすごい方だと思っていますが、私は『いい結果にたどり着く何パーセントくらいか』と、最後まで冷静に考えてしまうんです。そういうところを投げ打って勝負に出ることができなかったことは、悔しい部分でもありますね」

――しかし、そういう考え方だったからこそ、4×100mチームの中ではいなくてはならない存在になっていたのかもしれないですね。

「一番目立たない存在だったのかもしれないですけど、そこは狙っていたことですしね。ただ、今のように、男子短距離チームがここまで早く個人で勝負できるようになるとは、正直なところ予想外でした。勝負できそうな選手が1人、2人はいても、こんなに揃うことは想像できませんでした。北京五輪前後は、100mの記録も今ほどニュースになっていませんでしたからね。

 日本として勝負できるのは個人よりもリレーだと思っていましたし、JOCや日本陸連が男子短距離に期待するのもリレーだと思っていました。いろんな国際大会での経験ほど勉強になるものはないですし、代表に入れば、あとは何が起こるかわからない。だから、リレーメンバーとして代表入りするために、『無難に決めたね』というところを常にキープすることを優先していました」

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