五輪でメダルを目指す神野大地の夏。新フォームで70km走に挑む (3ページ目)
「あー、きつい!!」
水分を補給しながら神野が呻くが、表情にはまだ余裕が感じられる。最初の1山は80分で終わった。3分間のレストを挟んで、2山目に入る。
「疲労がたまってきた時、どう動かしていくのかが大事だから」
中野が神野に言う。当然だが、最初の1山とはメニューが違う。
中盤のCのトレーニングで、神野の体躯を支える足がプルプルと震える。「はぁ、はぁ」と息が荒くなり、耐えられずに思わずマットに手がついてしまう。
「まだ、早いっ!」
中野の檄が飛ぶ。無言の神野は支える足に体の全神経を集中させ、手をつくのを必死に耐える。体をぶつけ合うことはないが、まるで相撲のぶつかり稽古のようだ。神野は歯を食いしばり、負けてなるものかと限界ギリギリの体を必死に動かした。
2山目は75分間で終わった。神野はすべてのパワーを放出したかのような疲れた表情で水を飲む。そのままスッと立ち、尻からハムストリングの周辺を触り、鏡で確認している。
「春から比べると筋肉がついたね。特に尻は丸みが出てきた。1年前とか筋肉のない状態でよく走っていたよなぁ」
中野がそういって苦笑した。
「ホント、どこで走っていたんでしょうね(笑)。前は足を動かして走っていたけど、今は筋肉で足をもっていっている感じがします」
神野も違いを感じている。もともと体が細く、尻から足にかけて"マッチ棒"のようだったが、今は尻から太ももにかけて膨らみが大きくなり、"綿棒"になった感じだ。春先からいったいどのくらいの筋肉が増えたのだろうか。
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