リオ五輪陸上で最もメダル有望。「競歩トリオ」が語るチーム日本の戦略 (3ページ目)
森岡 僕自身は練習ですごい力を発揮するタイプではないけど、荒井は持ちタイムのわりに、すごく練習ができるタイプだったので。50kmは練習の積み重ねが結果につながる種目だから、上がってくるだろうなと思っていました。だから大邱(テグ・韓国)の世界選手権があった11年にドンと来たときは、「やっぱり来たな」と思いました。
谷井 あの年は日本選手権でも25秒差だったし、世界選手権も僕のすぐ後ろの10位だったので、ヤバいと思いましたね。上には森岡もいたので「もっと頑張っていかないとすぐに追い抜かれて代表も危うい」と。それで気合いが入りました。
荒井 僕は正直、11年頃には森岡さんは一歩前に行っているので勝つのは厳しいかなと思っていたけど、谷井さんに対しては「勝つのは時間の問題だな」と思っていたんです(笑)。年齢のこともあるし、ロンドン五輪が終わったら引退もあるのかなと思っていたから。でもそこで終わらないのが谷井さんですね。今はどんどん調子を上げている。普段の生活を見ていても新しいことを勉強しようとする貪欲さが年々増しているし。モチベーションも普通は年齢を重ねれば落ちてくると思うけど、逆に上がっていってる感じもあるからすごいですよ。
――50kmという種目の難しさというのはどういうところですか。
森岡 距離に関していえば、35~40kmが壁みたいな感じで、そこをうまく乗り越えると記録は一気に変わってきますね。
谷井 50kmの場合はペースの落ち幅が大きくて、最後は徒歩になる選手もいれば、倒れてしまう選手もいる。だからトータルの「ベース」を上げていかなければ、さらに上というのは難しいですね。3時間45分で歩くなら、まずは2km9分でずっと押して行けるベースがありつつ、レースではその中でどこかを落とし気味にして最後を上げていくとか。だから僕が一番大事だと思っているのは50kmをまとめることですね。理想は、最後にペースを上げていくことだけど、どんなに悪くても極端な落ち方をしないである程度のタイムで歩くことが必要です。
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