【車椅子マラソン】土田和歌子「諦めない気持ちが導いた、8年越しのフィニッシュライン」

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

車椅子マラソン女子、先頭を走る土田和歌子選手車椅子マラソン女子、先頭を走る土田和歌子選手「パラリンピックの舞台に戻ってこられて幸せです。まずはゴールできたことに感謝します」

 ロンドン・パラリンピック最終日、車椅子マラソンに出場して1時間49分02で5位に終わった土田和歌子はゴール後、懸命に声を振り絞った。悔し涙がほほを伝っていた。

 土田はこのレースにかけていた。パラリンピックのマラソンとしては初出場となった2000年のシドニー大会で銅メダルを獲得。続くアテネでは銀メダルとステップアップ。ごく自然に、「北京で金メダル」が次の目標となった。

 08年、やるべき準備はすべて行ない、満を持して出場した北京大会。最終日のマラソンを前に5000mに出場した土田は、ゴールまで残り500mを過ぎたあたりで、前を走っていた選手たちのクラッシュに巻き込まれ、肋骨などを骨折。マラソンはスタートラインに立つことすらできなかった。

「このままでは終われない」

 アスリートとして世界の頂点をとることは長年の大きな目標だった。切れそうになる思いを必死に奮いたたせ、土田はその目標達成のためロンドン挑戦を決めた。年々あがる世界のレベルに対応するためのスピード練習なども取り入れ、年齢とも戦いながらの練習は過酷だったが、土田は耐えた。

 そうして土田は強い思いを胸にロンドン大会にやってきた。北京ではレース途中で無念のリタイアとなった5000mも、順位は6位と振るわなかったものの、ロンドンでは無事、フィニッシュできた。

 1週間後、マラソンのスタートラインに8年ぶりに立った。乗り越えてきた日々を思い、積み重ねた練習で得た自信を糧に、「積極的に行こう」とロンドンの街へと走りだした。

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