「僕の心に永遠に残る」「ベストを引き出してくれた」海外トップ選手が語り継ぐ国枝慎吾のレガシー (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【国枝との一番の思い出】

「シンゴはソーシャルメディアで引退を発表する少し前に、とても温かいメッセージを送ってきてくれたんだ。僕らはライバルであり、パートナーであり、よき友人だと書かれていた。だからこそ、先に知らせたかったのだと書いてあった」

 その事実を「とてもうれしく思った」というゴードンは、こうも続ける。

「彼が正式に引退を発表した時は、もちろん寂しかった。シンゴは、僕が車いすテニスを始めた13年前の時からずっと、世界のトップレベルだった。彼がいなくなるのは寂しいけれど、同時に彼が成し遂げたすべてを祝福したいとも思うんだ」

 優しい笑みで語る彼に「国枝との一番の思い出」を尋ねると、次の答えが返ってきた。

「一番思い出深い試合は、ここ(全豪オープン)の初戦で彼に勝った試合。とても競った試合で、彼が僕のベストのテニスを引き出してくれた」

 それは2016年1月。ゴードンにとっては、2年に及ぶ対国枝8連敗を止めた試合でもあった。

 もうひとつ、ゴードンが言及したのは「2015年のローランギャロス(全仏オープン)」だ。

「対戦ではなく、ダブルスを組んで優勝したんだ。僕にとって初のグランドスラムタイトルだったので、特に思い出に残っている」

 ここに挙げたふたつの勝利がトリガーになったかのように、ゴードンは2016年に全豪とウインブルドンのシングルスを制すると、リオ・パラリンピックでも金メダルを獲得。近年は手首のケガに悩まされ手術もしたが、「最近ようやく、痛みなくテニスができるようになった」と言った。

 そのようなケガとの戦いにおいても、国枝はロールモデルになっているという。

「僕が最もシンゴを尊敬している点は、彼のいかなる時も変わらぬ勝利への渇望と、どんな状況からもカムバックしてくる集中力とモチベーション。たとえ勝利に見放された時でも、ケガから復活してきた。彼は常に、ベストを尽くしていた。コート上だけでなく、オフコートでもトレーニングし、プロフェッショナリズムを示してきた」

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