全豪10度目優勝の国枝慎吾が「今がいちばん強い」と言える理由 (4ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 その言葉のとおり、彼は挑戦を続けている。とくに、約3年前から改造に取り組んでいるバックハンドは、今大会でも幾度となく窮地を救った。昨年のウインブルドン前に変えたグリップは、冬のあいだにさらに改良を重ね、コツを掴んだことで、インパクトの力強さが増した。

 より攻撃的なフラット系のショットで相手に時間を与えないテニスを構築した国枝。今季初戦のスーパーシリーズのツイーズヘッズで試したところ、確実な手ごたえがあったといい、彼のテニスはもう一段階、高いところへと進化した。

 ライバルたちも、スケールアップしている。全豪の決勝で戦ったリードは、金メダルを獲得した2016年のリオパラリンピック後は調子を落とした時期があったものの、力強いストロークは健在で、この大会で復活を印象づけた。リードが1回戦で破った26歳のグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)は昨年、全米以外の3大会を制し、国枝に抜かれるまでは世界ランキング1位をキープしていた。

 また、昨年末の世界マスターズから新たなコーチを迎え、全豪の前哨戦ともいえるメルボルンオープンで優勝したヨアキム・ジェラード(ベルギー)については、「いい取り組みができているようだ」と国枝も岩見亮コーチも警戒する。

 国枝は「ライバルとの差はわずか。みんな急激に伸びたりするので、いつ逆転されるかわからない」と話し、気を引き締める。

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