2020.02.05

全豪10度目優勝の国枝慎吾が
「今がいちばん強い」と言える理由

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 壮絶な打ち合いの末、チャンピオンシップポイントを手にする。彼のテニスは勢いを増し、追い込まれた相手は返球するのがやっとだった。メルボルンの夏の青空に向かって高く上がったボール。彼はその下で体勢を整えると、渾身の力でスマッシュを叩きこんだ――。

2年ぶり10度目の全豪オープン優勝を果たした国枝慎吾 今年最初のグランドスラムである全豪オープンテニス車いすの部の男子シングルス決勝で、第1シードの国枝慎吾(ユニクロ)が28歳のゴードン・リード(イギリス)を6-4、6-4で破り、2年ぶり10度目の全豪タイトルを手にした。

 優勝を決めた瞬間、国枝は雄叫びとともに両手を天に突き上げ、喜びをかみしめた。四大大会を制したのは、2018年の全仏以来。この数年で若手選手が台頭し、誰が勝ってもおかしくない戦国時代に突入している男子。この2月に36歳を迎えるベテランは、「今回を逃したらもうタイトルを獲れないかもしれない、本当にラストチャンスになるかもしれないという思いで、この舞台に臨んでいた」と明かす。

 試合後のオンコートインタビューで、カギとなったプレーについて尋ねられると、国枝は少し困惑した表情を浮かべて「まったく覚えていないですね」と苦笑いする。それだけ無我夢中で、ボールを追いかけていた。