兎澤朋美が走り幅跳びで東京パラ内定。素顔は研究熱心な「質問魔」だ (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 陸上部で兎澤を指導する水野洋子監督は、「入学したばかりの頃は100mを1、2本走るので精いっぱいだった。ここまで来たのは本人の日々の努力の賜物」と目を細める。監督によれば、兎澤の性格は、「真面目」のひと言。フォームや体の使い方の指導でも、見本を見せて「こう動かして」と指導するだけでは足りないという。兎澤自らが考え、理解し、再現することが必要で、「理解できないと行動に移しにくいようだ」と監督は明かす。

 大きな転機となったのは、17年秋に参加した義足メーカー、オットーボック社が主催するランニングクリニックだ。指導するのはドイツ人のハインリッヒ・ポポフ氏。兎澤と同じT63男子走り幅跳びのパラリンピック金メダリストで、昨年引退したが、現役時代から日本をはじめ世界各地で「走る喜びを感じてもらいたい」と、義足ユーザー対象のランニングクリニックを開催している。日本では、2015年から今年まで5年連続で開催されている。

 ポポフ氏は自身の経験をもとに、「競技用義足で走るためにはまず、きれいに歩くことが重要」など熱心な指導に定評がある。「ポポフ塾」受講を機に本格的にスポーツを始める人やパラリンピアンも多数誕生している。ちなみに前川も村上も「ポポフ塾」卒業生だ。

 新たな動作を学ぶのに、頭での理解が必要な兎澤にとって、自分と同じ中途切断者でパラリンピック金メダリストの言葉は理解しやすかったに違いない。このクリニックは兎澤にとってアスリートとして急成長する大きな一助となった。

 水野監督によれば、「ポポフさんの指導がすごくプラスになっている。次に会うまでに教わったことを修正し、再現できるようにしようとひとつずつ目標を立て練習している」と言い、監督自身も義足選手の指導は初めてのことであり、「私自身も学んでいる」と話す。

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