東京パラリンピックの金メダル候補が語る「東京の街への期待」
■"世界最速"を目指して
「日本でレースを走るのはこれで5回目かな。川崎、それから大阪と渋谷が2回ずつ」
11月6日、東京・豊洲のランニングスタジアムの一室。パラ陸上・短距離のフェリックス・シュトレング(23歳/ドイツ)は、記憶を辿るように話した。
日本で世界の走りを披露したフェリックス・シュトレング その2日前、フェリックスは渋谷の公道に陸上トラックを敷設して行なわれた『渋谷シティゲーム』に出場。同レースはパラ陸上のT64クラス(下腿義足使用など)における国内外のトップ選手が、60mの世界記録(6秒34)に挑むというものだ。同記録を保持するのは、クリスチャン・コールマン(米国)。100mで9秒79(世界歴代7位)のタイムを持つ世界トップスプリンターである。公認記録にはならないものの、パラアスリートたちの飽くなき"速さ"への意志は、健常者の世界記録を見据えている。
同レースの主催者の一人である義足エンジニアの遠藤謙(Xiborg)はこう語る。
「選手が最もかっこよく見えるのは速く走っている時。"障がい者スポーツ"という枠組みではなく、アスリートの本気のパフォーマンスを見て欲しい」
今レースにおけるフェリックスの結果は、リチャード・ブラウン(米国/T64・100m、200m世界記録保持者)、ジャリッド・ウォレス(同/ロンドン世界パラ陸上200m金メダル)に次ぐ3着。記録は7秒36と"世界記録"には約1秒弱及ばなかったが、フェリックスは満足気だ。
「オフシーズンにも関わらずこれだけのタイムを出せた。来シーズンがとても楽しみだよ」
■同僚というライバル
100m10秒67、200m21秒42、走り幅跳び7m71。
フェリックスの持つ自己記録である。単純比較はできないものの、インターハイ(全国高校総体)やインターカレッジ(全日本学生選手権)におけるトップ選手の競技力に比肩する水準だ。先天性の右足首欠損で、下腿部から鋭角に曲がる義足を装着して走る。自身の強みは「初速」だという。高硬度のカーボンを使用した義足で接地面をしっかりと踏みしめ、スタート直後からトップスピードに乗る。
「僕の強みは前半。力強い加速で一気にスピードに乗って、それを維持してゴールするスタイルだ」
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