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全豪×、全仏○、ウインブルドンは?
上地結衣、ライバルと最終決戦へ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 上地がデグルートを強く意識していることは、先月の全仏オープン対戦時に残した言葉にも、克明に刻まれている。

 対戦を迎える前に、上地はデグルートのクレーでの試合動画を複数観戦し、対戦相手が取った策のなかで効果的なパターンをいくつか頭に入れていたという。それは、スライスなどの低い弾道のショットを左右に散らしていくこと。また、チェアワークの小回りが効きにくいクレーの特性を活かし、同じコースに続けて打つことも目についた対策のひとつだった。

 そうした映像から得たプレーのイメージは、実際に決勝でデグルートと対戦した上地を助ける。第1セットは今までどおり、「自分のショットの精度を高め、回転をかけて高いところで取らせることを意識した」が、相手にことごとく攻略された。

「このままでは埒(らち)が明かない」

 そう感じた上地は、セットを失い後がなくなった場面で、頭の片隅にあった前述の策を試してみる。すると、戦略の変化に相手も戸惑いを覚えたか、上地も「予想外」と驚くまでにハマった。

 この戦術変更が奏功し、上地が逆転勝利で頂点へ。全仏2連覇を達成したが、それ以上に「彼女に続けて負けていたので、それを止められたことで気持ち的にスッキリした」と、上地はライバルに勝てたことを喜んだ。

 ただし、全仏決勝で取った戦法は、必ずしも彼女の望むテニスだったわけではない。「あくまで自分が目指すプレーをやるまでの、前の段階だと捉えています」。その言葉には、高いレベルでの独自のスタイル確立を標榜する、女王のプライドがにじむ。全仏では披露のチャンスが少なかったが、「新しいポイントの獲り方に取り組んでいる」とも言った。

 また、車いすそのものにも着目し、新しいチェアを試してもいるという。そのなかでやはり気になるのは、デグルートの動き。「ディードがどんなことをやっているのかも見ています」と、ライバルの成長や取り組みにも注視を向けている。

 今回のウインブルドンでは、デグルートが第1シード、上地は第2シードのため、両者が対戦するのは必然的に頂上決戦の舞台となる。

 まだ手にしていない栄光のタイトル――。それは、最大のライバルを芝で破った達成感とともに訪れる。

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