秋山里奈「水泳仲間の小学生たちのおかげで金メダルが獲れた」

  • 文●スポルティーバ text by Sportiva
  • 写真●五十嵐和博 photo by Igarashi Kazuhiro

盛りあげよう!東京パラリンピック2020(5)

ロンドンパラリンピック金メダリスト秋山里奈インタビュー Vol.2
前回は、ロンドンパラリンピックから2年が経ち、現在は引退されて、会社員として働いている秋山里奈さんの近況をうかがった。2回目は3歳から始めた水泳で、ロンドンパラリンピック金メダルを獲得するまでの道のりを振り返りつつ、その中で見て感じてきた障がい者スポーツの環境についてお話を聞いた。

これまでの水泳人生を振り返りつつ、練習環境などについても語ってくれた秋山里奈さんこれまでの水泳人生を振り返りつつ、練習環境などについても語ってくれた秋山里奈さん伊藤数子さん(以下 伊藤) 3歳から水泳を始めて、いつからパラリンピックや世界を目指そうって思ったんですか?

秋山里奈さん(以下 秋山) 小学校5年生のときに河合純一さん()の本を読んだのがきっかけです。河合さんのバルセロナパラ(1992年)の銀メダルが悔しくて、アトランタパラ(1996年)では絶対金を取るために頑張った姿や、中学校教師を目指して、いろいろな困難を乗り越えて頑張っている姿を本で読んだ時、競技者としても一人の人間としても尊敬できて、素晴らしい人だなと思いました。
※全盲のスイマー。パラリンピック5大会に出場し、数多くのメダルを獲得している日本を代表する選手。

伊藤 それでパラリンピックを目指すようになったんですね。

秋山 はい。これは競技を始めてから思ったことなんですが、実は私のように先天的に目が見えないと結構大変なんです。理想のフォームを見たことがないですから、自分のフォームがなかなか出来上がらない。河合さんのように自分も中途失明だったらよかったなと思ったこともあります。見えている状態の体で学んだバランス感覚は、ちょっと欠けても元の記憶があるので、有利なんです。でも、結局中途失明でも先天的でも、一緒のフィールドで戦わなければいけないので、それを言い訳にしていたら全然始まらない。そもちろん「見えていたらもっとフォームが綺麗になったのに」とか、すごく自分を卑下することもあるんですけど、だからといってハンデをくれるわけじゃないので。

伊藤 そういうアスリートとしての魂みたいなものが、秋山里奈っていう人の中に元々あるんですね。そのフォームの話ですが、コースロープにぶつかってしまうことも織り込み済みで、スピード強化など、どういう発想で臨んでいたんですか?

秋山 私たちの全盲のクラスは黒塗りゴーグルで、みんなそれをつければ条件は一緒で、ぶつからない人なんてほとんどいないんです。でも、やっぱりそれは自分のフォームが安定してないから、(中途失明の人より)私のほうがすごく曲がるだろうし、ぶつかりやすくはなるんですけれど、それはしょうがないっていうふうに開き直って。ぶつかってもそこからどうやって気持ちを立て直すかとか、ぶつかってからまた加速する技術を身につけたりとか、そういう風に考えて泳いでいました。

伊藤 ぶつからないような考え方じゃなくて、ぶつかった後どうするか。

秋山 ぶつからないのは不可能なので。

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