パリ五輪のメダルラッシュから2年、日本フェンシング界はどう変わったのか 金メダリストがアジア競技大会を展望 (4ページ目)
【日本は再び世界を席巻できるのか】
──アジア競技大会で日本チームにどのようなことを期待しますか?
宇山 無観客での開催だった東京五輪では実現できなかった、多くの方にフェンシングを見ていただける絶好の機会になるでしょう。ホームの大声援を受け、ピストに上がった選手たちが全種目でメダル争いに食い込めるような展開になると思います。ひとりでも多くの選手が自身のパフォーマンスを発揮して、メダルを手にできることを楽しみにしています。
──大会後、ロス五輪に向けて必要なことはありますか?
宇山 日本のフェンシング界は、2003年に初めて外国人コーチを起用してから本格的な強化が進み、北京五輪では太田雄貴選手が銀メダルを獲得しました。一方で世界に目を向けると、コロナ禍の影響もあって東京五輪の前後に引退を決めた選手も多く、パリ五輪は世代交代の最中に行なわれました。
また、本来ならば強豪の一角を占めるウクライナは戦禍に襲われ、同じくメダル常連国だったロシアは国際大会に出場できなくなりました。それらの要素を冷静に分析すると、全盛期を迎えていた日本人選手にとって、パリ五輪は勝ちやすい条件が揃った大会だったと言うこともできます。
そのパリ五輪から約2年が経ち、ロス五輪で飛躍が期待される次世代の選手たちが世界各国で頭角を現しつつあります。世界のトップ選手たちが実力に磨きをかけ、もう一段階レベルを上げてくる可能性も十分に考えられます。アジア競技大会も、五輪に向けた立ち位置を確認するうえで大事なマイルストーンですが、その結果に一喜一憂することなく、引き続き長期的な視野で強化を進めていってもらいたいです。
──2年前のメダルラッシュで「日本は"フェンシング王国"になった」と言われました。今後、再び世界を席巻する未来は訪れそうでしょうか?
宇山 パリ五輪以降、フェンシングを始める子どもたちが増えました。北京やロンドン五輪での、太田さんをはじめとする先人たちの活躍に刺激を受けてフェンシングを始めた世代が、東京やパリでメダリストになった。
まだまだ先の話になりますが、競技に取り組んでいる若い世代のみなさんの努力が実り、メダルを手にする日も訪れるんじゃないかと思います。そのような未来が訪れることを願ってやみません。競技力の向上だけでなく、気軽に体験できるサービスなど、環境の整備も大きな課題となっています。私も陰ながら各所で活動しているので、選手たちの活躍を最大限広げていけるお手伝いがしたいと思っています。
【プロフィール】
宇山賢(うやま・さとる)
1991年12月10日生まれ、香川県出身。元フェンシング選手。2021年の東京五輪に出場し、男子エペ団体において日本フェンシング史上初の金メダルを獲得。同年10月に現役を引退。2022年4月に株式会社Es.relier(エスレリエール)を設立。2025年3月に筑波大学大学院の人間総合科学学術院人間総合科学研究群スポーツウエルネス学学位プログラム(博士前期課程)を修了。公益社団法人日本フェンシング協会・アスリート委員会の委員長(共同)、一般社団法人日本パラフェンシング協会・育成委員会の委員を務める。
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著者プロフィール
白鳥純一 (しらとり・じゅんいち)
ライター。WEBサイト「キングギア」でのライティングをきっかけに取材活動を開始。スポーツの取材やインタビュー記事を中心に執筆を続けている
【写真】フェンシング江村美咲・フォトギャラリー
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