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電気・ガスが止まる、食べるお金がない、家はナメクジだらけ 競輪・佐々木豪を磨き上げた高校時代のたったひとりの生活

  • text by Sportiva

四国を代表する選手のひとり、佐々木豪 photo by Sunao Noto(a presto)四国を代表する選手のひとり、佐々木豪 photo by Sunao Noto(a presto)この記事に関連する写真を見る

【地元のGⅠがもたらしたもの】

「艱難汝を玉にす」(かんなん なんじを たまにす)

 これは、"人は苦労や困難を乗り越えることによって磨かれ、立派な人物に成長する"という意味で、競輪選手・佐々木豪(愛媛・109期)の過去を聞くにつれ、このことわざが頭をよぎってきた。

「つらかった時期に、それをつらいと認めてしまうと、そこで終わってしまうと思うんです。周りにも結構言われてきましたが、環境的にはグレてもおかしくなかったと思いますし、自分でもよくグレなかったなと思います」

 今年30歳の節目の年を迎えた佐々木は、自身の過去を語りながら笑顔を見せた。

 彼は現在、約2200人いる競輪選手のなかで、上位約210人が所属するS級1班で活躍する選手だ。8月に地元・愛媛で開催されたGⅠオールスター競輪では、唯一予選・準々決勝の3レースを1着で通過し、準決勝も勝ち上がった。そして佐々木は初のGⅠ決勝に挑んだ。

「動きは本当によかったと思いますし、勘も冴えていて、周りもよく見えていました。決勝では優勝を狙っていましたが、僕は(四国勢の)最後方になってしまって、ほとんど勝負権はありませんでした」

 この決勝では四国勢4人が決勝を走り、優勝は徳島の犬伏湧也(徳島・119期)が勝ちとったが、実に20年ぶりとなる四国勢によるGⅠ制覇に愛媛のファンも熱狂。6着となった佐々木にも、感謝とねぎらいの言葉が飛んだ。

「いろんな人が声をかけてくれました。(準決勝は)単騎で走って3着で決勝に残れたので、それに対して『しびれたよ』とか。そう言われたことは、むちゃくちゃうれしかったです」

 地元で受けたファンからの言葉の数々に、佐々木は競輪の魅力を再確認した。

「オールスターの声援は本当にすごくて、あれだけの声援のなかで走れることは人生においてなかなかないことだと思いますし、これまでにない高揚感を味わいました。あの中心にいることができたのは、人生に彩を添える意味でもすごくいい経験ができたと思いますし、感動しました」

 184cm、93kgの体躯で、切れ長の鋭い眼光ゆえに、豪放な性格に見える佐々木だが、その素顔は素直で誠実だ。地元ファンからの声援にも真摯に応えようとし、それらの言葉を原動力に変えようとする姿勢もある。

 そんな彼を形作ったのは、その笑顔からは想像できない、一見不幸にも思える壮絶な高校時代にあった。

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