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杉本和陽六段が振り返る藤井聡太棋聖との初タイトル戦 師匠の形見を羽織って挑み、「一番好きな瞬間」を体感した (4ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

【藤井棋聖との対局は「将棋を指している実感が得られた」】

 棋聖戦は5番勝負で行なわれ、各棋士の持ち時間は4時間と短めに設定されている。クラスに関係なく挑戦できることもあり、若手棋士が頭角を現すことも多く、米長永世棋聖や藤井棋聖なども、棋聖戦で初のタイトルを手にしてきた。

「対局の前日は、魂を抜かれるくらい写真を撮られましたし、緊張していたこともあって、将棋のことはあまり考えられませんでした」

 そうして迎えた、初のタイトル戦の第1局(6月3日・栃木県日光市 日光金谷ホテル)。序盤こそ「盤上の駒を移動させるだけで、震えるほど緊張を感じた」そうだが、徐々に落ち着きを取り戻す。午前のおやつには、日光金谷ホテル伝統の味として知られる「金谷チーズケーキ 彩フルーツ添え」、午後は「金谷時のプリン~3つの味の記憶~」、そして杉本が「対局の時には欠かせない」と話す「カツサンド」で終盤の対局に備えた。

「5つくらいあるメニューのなかから、前日に選ばせていただきました。第1局では藤井さんも同じおやつを頼まれていたので、少しうれしかったですね。(午前、午後と)2回もかぶるケースは多くありませんから」

 おやつを味わえるくらい緊張がほぐれた杉本六段は、「時間が過ぎるのは意外に早かった」と振り返る第1局で、中盤まで藤井棋聖と伯仲の戦いを見せる。

「盤越しに見た藤井さんの純粋に将棋に向き合う姿、難しい局面になればなるほど目を輝かせる姿が印象に残りました。私もその境地にたどり着けるように頑張らなければいけない、と感じましたね」

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