脇本雄太がGⅠ高松宮記念杯競輪を制覇 恩師の訃報に涙する古性優作、仲間を引っ張る寺崎浩平の思いを背に走りきる (3ページ目)
あとは脇本と古性の一騎打ちだ。そこでも脇本は「古性君の気持ちもしっかり背負ったうえで、勝負しようと思っていた」とふたりで競り合いながら4コーナーを回った。
実は、古性は今開催中に長年恩師と慕ってきた郡山久二氏(大阪・55期=引退/60歳)の病気での訃報を受けていた。古性にとって郡山氏は「自分がA級のころから見てもらっていて成長させてくれた」存在。準決勝後にそのことを明かした古性は涙をこらえきれなかった。
それを知る脇本は、古性がこの決勝に並々ならぬ思いで臨んでいると感じていた。
ただ互いにプロの世界で生きる勝負師であり、情けは厳禁だ。スポーツ、ファン、そして仲間へのリスペクトがあるからこそ、全力でぶつからなくては失礼にあたる。最後の直線ではまさに力勝負となったが、脇本が追いすがる古性を振り切り、1着でゴール線を超えた。
脇本が先にゴール線に入る photo by Photoraidこの記事に関連する写真を見る ふたりはレース後に自転車を下りてがっちりと握手。優勝の胴上げは古性が中心になって、脇本の体を力強く持ち上げた。
また脇本は「本来はライン(近畿勢)で決めないといけなかったが、今回は寺崎君のおかげもあった」と寺崎をねぎらう言葉も残した。結局9着に沈み、「4コーナーで勝負する脚力が必要だった」と悔しさをにじませていた寺崎は、「脇本さんと古性さんのワンツー(フィニッシュ)に貢献できた」と最低限の仕事ができたことにわずかながらも安堵の表情を見せた。
ゴール後、近畿勢3人が労をねぎらう photo by Photoraidこの記事に関連する写真を見る
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