佐竹雅昭が振り返る運命の出会い 公園で声をかけてきた極真の男と「ノリが軽い」石井館長 (2ページ目)
【「君は日本一になれるよ」】
それまで佐竹は、突きを放ったあとにすぐ拳を引いていたという。しかし極真會のジャージを着た男性は、その"引く突き"を「違う」と断じた。
「『突きは引くんじゃない。止めるんだ』と指導されました。すぐに拳を引いてしまうと、相手を倒すことはできない。イメージとしては、大木を貫くような感じですね。そのひと言のおかげで、自分でも木に当たる拳の感触がまったく違うことがわかりました。
試行錯誤で正しいやり方がわからなかったのが、たった一瞬で雲が晴れたように極意を理解できたんです。この時の体験は、今も僕の指針になっています。『物事は、それをよく知る人から学ばないといけない』。見ず知らずの男性から、身を持って教えられました」
指導を受けた後、公園のベンチで言葉を交わした。
「その男性から『君は将来、何をやりたいんだ?』と聞かれて、僕は『(大山倍達の自伝に記述があった)"牛を殺す人間"になりたいです!』と即答しました。すると、男性は苦笑いしてそれには答えず、『ほかには?』と続けたので、『日本一になります』と言いました。そうしたら、『君は日本一になれるよ』と断言してくれたんです」
初対面の佐竹少年に「日本一」の太鼓判を押した理由を、男性はこう説いたという。
「その方は近所に住んでいて、僕が公園の大木に向かって、毎日突きや蹴りの練習をやっている姿を見ていたそうなんです。それで、『なぜ日本一になれるのかというと、君は人に笑われるような馬鹿なことやっていたから。普通の人は、他人から馬鹿にされるようなことはやらない。中学生で毎日、大木を蹴り続ける人間もほかにはいないはず。でも、君は誰もやらないようなことを、ためらわずに最初にやれる男だ。だから、日本一になれるんだよ』とおっしゃったんです。
その言葉で、完全に空手家になる道が定まりました。『ヨシッ! 他人から笑われようが自信をもって、自分を信じてやってみよう』と。その日が、僕が"超人"になることを追求するスタートになった日です」
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