梅川風子が「過去一番悪い」なかで「不思議」な完全優勝 最強・佐藤水菜への宣戦布告を有言実行 (2ページ目)
【他の選手は「もはや見ていなかった」】
それでも懸命に回復に努めた梅川は少しずつコンディションを戻し、レースを勝ち上がる。準決勝を終えてもコンディションは万全とは言えなかったが「絶対に諦めず、抜け目なくチャンスを見つけて仕掛けたい」と、あらゆる展開を想定しながら自分が勝つためのストーリーを模索した。
そして迎えた決勝。梅川は2番車。隣の1番車にはナショナルチームで共に練習を積み、誰よりもその強さを理解している佐藤水菜が入った。スタート直後「誰も(前に)出ないと感じたし、前日から強気のレースをすると決めていた」佐藤がじわりと先頭に立つと、その直後にピッタリと梅川が続く。連日、後方から勝利を決めていた2選手が前方に固まる予想外の展開になった。
「(展開は)号砲が鳴るまで悩みに悩んでいました。出てみると佐藤選手がレースをコントロールする流れになって、今の調子で無理に(自分が)コントロールしようとしても負けは決定していると思ったので、佐藤選手の仕掛けをどう判断するかに切り替えました」
勝機を伺う梅川は、とにかく前を走る佐藤が勝負するタイミングだけにフォーカスした。ラスト1周半では他の選手が一気に先頭へと仕掛ける姿も「もはや見ていなかった」と語るほどに研ぎ澄ませた集中力でギリギリまで佐藤の背後を追い続ける。そして最後の直線、外に持ち出した梅川が一瞬のスピードで僅かに前に出ると、そのままゴール線を駆け抜けた。
最後に佐藤水菜をかわした梅川(2番車、黒) Photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る
お互いに死力を尽くした勝負の直後、内を走るライバル佐藤にポンと背中を叩かれた梅川は力強く右の拳を突き出し喜びを表現した。所属チームで連載している自身のコラムで「サトミナ(佐藤水菜)を倒すのは私ってことで」と記した言葉が現実となった瞬間だった。噛みしめるようにゆっくりとバンクを回る梅川のウイニングランに、そして白熱のレースに、小倉のファンからは惜しみない拍手が贈られた。
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