ガールズケイリン史上最速で500勝を達成した児玉碧衣 驚異の勝率83.8%の秘訣は「リミッターを外せる」力 (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 池田清太郎●写真 photo by Ikeda Seitaro

 しかし勝利を重ねる一方で、勝ち続ける難しさも感じるようにもなる。ガールズケイリン最高の栄誉であるグランプリを3連覇したことで、次の目標を見失いかけた時期もあった。他の選手が3位以内を示す確定板に載るだけで褒められるのに対し、児玉は2位でも「どうしたの?」と聞かれてしまう。それが苦痛で、「自分も確定板に載るだけで満足する選手でいい」と弱気になったこともあると振り返る。

 そんな折、2021年7月のガールズケイリンフェスティバルで初日7着、2日目4着となり、決勝に進めず、最終日も2位と、デビュー以来、初めて3日間のシリーズで1度も1着を取れずに終わった。この時、猛烈な悔しさと恥ずかしさを感じたという。

「やっぱり自分はトップで走りたいと思ったんです。そのためにはプレッシャーで精神的にキツいと感じることがあっても、それに打ち勝たないといけない。その直後のガールズドリームレースで勝つことができ、やっぱりこの感じだなと気持ちを吹っ切ることができました」

 そして「自分は競輪を辞めたら、他にできることはないですから」と笑って付け加えた。

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【自分を突き詰め、追い込める】

 ビッグレースでの強さは折り紙つき。加えて500勝を達成したのが597レース目で、その時点での通算勝率は83.8%とハイレベルな安定感を誇る。その強さを自分自身でどう見ているのか。その問いには時間をかけて真剣な表情で考えた後、「あまりキツい練習は好きではないのですが」と前置きした上で、こんな答えが返ってきた。

「私がデビューした時、ホームバンクの久留米競輪の先輩で、すでにトップレーサーだった小林優香さんがナショナルチームに選出されていて、同じ場所で練習できなかったんです。追いかける背中がないなか、レースの内容や走り方など、自分で考えないといけませんでした。自分で本当に必要なことは何かを突き詰めて考えて取り組んだからこそ、芯から理解でき、レースに生かせているのかなと思います。

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