ロコ・ソラーレ吉田知那美が「悩んだり迷ったりしたら、最終的にそこにたどり着く」という言葉とは? (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

 これを私は、「勝つためにプレーするのであって、相手を負かすためにプレーするのではない」と解釈しています。

 私は、自分自身に勝つためにプレーをしています。カーリングは相手を負かすために努力するスポーツではありません。試合をしてくれるチームを「敵」ではなく「相手」として捉えています。

 相手がいないとゲームができませんし、相手の好プレーがあるから、自分たちも好ショットを決めることができる。ずっとカーリングを続けていると、そういうことが理解できてきて、ゲームは"バトル"じゃなくて"パフォーマンス"なんだ、と自分なりに認識できた。

 そうすると、ストンと胸に落ちたというか、カーリングに関しては怖さが消えました。

 もちろんスポーツである限り、白と黒はつくんですけど、勝敗は相手の努力も大きく関係してきます。それはコントロールできないおまけのようなもので、自分自身でコントロールできない目標や夢に突っ走ると、何が成功か判断できなくなる。

 大事なことは、人の努力に左右されずに、自分自身の目標に向かうこと。特にロコ・ソラーレでプレーする時には、「どんな振る舞いがしたいか。どんな姿で氷に立っていたいのか。それだけはコントロールできるよね」という話をいつもチームで確認しています。

 現代は、受験とか就職とか、場合によっては恋愛なども、すべてに競争がついて回って、うんざりしてしまう人も多いかもしれません。同時に、「成功って何?」「納得できる結果とは?」とか、すごく難しくて......。ひょっとして永遠に答えの出ない問題なのかもしれない。

 けど、自分自身の成長のために決めた目標がブレなければ、人を負かさなくても勝つことができる。また、人に自分の目標を押しつけたり、他人の努力や目標を妨げたりしない。そのことをすべてのカーラーと、この「The Spirit of Curling」から教えてもらいました。そして、これからもともに歩んでいく言葉なんだと思っています。

吉田知那美(よしだ・ちなみ)
1991年7月26日生まれ。北海道北見市出身。幼少の頃からカーリングをはじめ、常呂中学校時代に日本選手権で3位になるなどして脚光を浴びる。2011年、北海道銀行フォルティウス(当時)入り。2014年ソチ五輪に出場し、5位入賞に貢献。その後、2014年6月にロコ ・ソラーレに加入。2016年世界選手権で準優勝という快挙を遂げると、2018年平昌五輪で銅メダル、2022年北京五輪で銀メダルを獲得した。2022年夏に結婚。趣味は料理で特技は食べっぷりと飲みっぷり。

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