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葛西紀明が語るジャンプスーツ問題。公平性を求めるなら「事前の身体測定厳格化と+0cmにするしかない」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

【公平性を求めるなら】

「一番誤差が出るのが、胸とお腹周りの数値ですね。お腹は計測の時に膨らませることができるし、胸も空気を吸えば大きくできる。審判もその部分にさわった段階でわかるから、あまりにも大きい時は脱がせて測定します。なかには公式練習や予選の時には『ここは大きいかもしれないから、明日までには直してこい』という審判もいますし。沙羅選手が蔵王では、スーツのお腹周りが2cm大きかったというけど、もしかしたら、蔵王では減量をしてお腹が減っている状態で測ったのかもしれませんね。

 無作為に抜き打ちで検査をするのは、やっぱりなかにはズルをしている選手もいるから、『お前ら気をつけろよ』というアピールだと思います。ただ、北京五輪の混合団体の時だけは違うでしょうね。あの時は沙羅選手だけではなく、ドイツやオーストリア、ノルウェーというメダル争いをするチームの女子選手が軒並み失格になっているので、何か大きな意図があったと僕は思っています」

 本当に公平性を求めるなら、事前の身体測定を厳格化するとともに、スーツを+0cmにするしかないと葛西は言う。そういう時が来て欲しいとしながら、さらに今の日本代表チームに向けては、こう続ける。

「今世界で戦えているのは陵侑だけという状態で、資金がないのでナショナル合宿や強化トレーニングができない状況です。各企業で強化はしていますが、方針を明確にした上でのナショナル合宿を増やしていかないと世界も見えてこないし、世界のトップレベルに達する選手も増えてこない。スーツへの早い対応も含めて、活躍する選手が出てきてスポンサーも集まり、それで得た資金を強化費にするようになっていかないと、日本チームのレベルも上がっていかないと思います」

 そのためには陵侑任せにするだけではなく、自分が早く代表チームに復帰しなければいけない。そういう向上心を含んだ熱い気持ちは、50歳の今も衰えてはいない。

profile
葛西紀明(かさい のりあき)
1972年6月6日生まれ。北海道・下川町出身。オリンピックには1992年アルベールビル大会から2018年平昌大会まで8大会に出場し、2014年ソチ五輪ではラージヒル個人で銀メダル、団体で銅メダルを獲得。W杯の個人出場回数は569回でギネス記録となっている。所属する土屋ホームでは、2009年から選手兼監督として小林陵侑や伊藤有希とともに世界を目指している。

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