ロコ・ソラーレが「ゾンビのような戦い」で包囲網を突破。カーリング日本選手権で優勝を成し遂げたわけ (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text by Takeda Soichiro
  • photo by (C)JCA IDE

 冒頭で触れたプレーオフ初戦の中部電力戦では、劣勢を強いられながらも挫けることなく、我慢強く戦った。サードの吉田知那美は大会中、「ゾンビみたいに......」と独特の表現で振り返ったが、相手のショットが上回っても、自分たちにミスが出ようとも、最少失点で抑えて、最後までしぶとく相手に食らいついていった。

 同時に、どの試合でも自分たちがやるべきことを決して怠らなかった。スイープひとつをとっても、リードの吉田夕梨花とセカンドの鈴木夕湖のスイーパーコンビは、仮に「ウォー」(履くな)の指示が出ていても、いつ「イエス」(履け)がかかってもいいように臨戦態勢で進むストーンに張りついていた。

 吉田知と藤澤のバックエンドは、どの試合も持ち時間を有効に消費しながら、クリーンなハウスだったとしても、自分たちの最低限と最高の結果を常に照らし合わせ、相手が最もやりたいことだけでなく、次善の策までも封じるために、思考を止めなかった。

「ハウス内に石を溜めるのは、当然リスクも高いので、精度にこだわらないといけない。『あと1センチだけロールしていれば』『あと1秒早くスイープしておけば』――それで、勝敗が変わる。もっと細かく石の動かし方を煮詰めないといけないと感じました」

 大会後、そう反省の弁を口にしたのは中部電力の北澤だ。

 逆に言えば、ロコ・ソラーレはその1センチと1秒の齟齬(そご)を、細かく素早いコミュニケーションで埋めてきた。苦戦や敗戦を糧に、修正と改善を重ね、ファイナルに進んだ時はほぼ仕上がった状態だった。それこそ、強いチームの特徴だ。

 情報収集と分析、活用。加えて、精度の高さと集中力と緊張の持続性において、ロコ・ソラーレはどこよりも上回っていた。まさに勝つべき強いチームの姿を見せつけて、再び女王の座に就いた。

 この結果、ロコ・ソラーレは日本代表として、7年ぶり2度目の世界選手権(3月/スウェーデン・サンドビーケン )に挑む。あまり馴染みのないヨーロッパのアイスだが、"ゾンビみたい"にしぶとく戦いつつ、持ち前の情報収集のスピードと活用能力を駆使し、チーム全員がそれぞれのすべきことを熟知、遂行できる愚直さがあれば、優勝も見えてくるだろう。

 世界の頂点へ、過去最高に期待できるチームだ。

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