歴代最高の卒業生たちが競輪デビュー。2度の受験失敗、世界大会2位、シュワちゃん好きと逸話満載の3人が時代を創る
ルーキーシリーズに挑む注目の3選手。左から近谷涼、塩崎隼秀、大川剛 今年3月、金の卵たちが日本競輪選手養成所を卒業した。この121期生たちは、歴代最高とも言われる黄金世代だ。デビュー前の能力を測る指標でもあるゴールデンキャップの獲得者は、過去最多となる15名。これまでの最高は119期の7名ということからも、全体のレベルの高さが伺える。
また昨年12月に早期卒業を果たし、いち早く競輪デビューを果たした、中野慎詞は18連勝でS級2班へ特別昇級し、太田海也は11連勝を記録するなど、競輪界では「怪物」とまで言われる存在となっている。
ここでは4月30日(土)から松戸競輪場で始まるルーキーシリーズに出場予定の121期のなかから、特に注目が集まる3選手を紹介する。
養成所に3度目で合格した苦労人、塩崎隼秀在所成績1位のスピードスター
塩崎隼秀
稀に見るハイレベルな121期生のなかで、在所成績1位となったのが、愛媛県出身の塩崎隼秀だ。この輝かしい成績で卒業したことに対し、本人は「上位にいたいとは思っていましたが、それよりもレースに勝つことにこだわっていて、その結果、最終的には1位という形でした」と控えめに語り、喜びに満ち溢れている雰囲気はない。それが逆に彼の実力の高さ、自信の表れと感じられる。
塩崎は、中野、太田並みに、連勝を期待される逸材のため、ここまで順調に歩んできたのかと思いきや、そうではない。大きな挫折を味わい、一度は競輪選手になる夢をあきらめようと思った過去があった。
中学時代から自転車レースを始め、仲間4人でチームを立ち上げるほどのめり込んでいた塩崎。入学する高校に自転車競技部はなかったが、この4人が入学することが決まると、高校側が自転車競技部を立ち上げるなど、当時から大きな期待をされていた。そして高校ではインターハイで2年連続4km速度競走2位となるなど、好成績を残した。
ただこの2年連続2位に大きな悔しさを感じた塩崎は、「もっと大きな大会で優勝したい」という思いを抱くようになり、卒業後は競輪界で活躍することを誓った。
しかし現実は甘くなかった。高校時代の実績を引っ提げて受けた養成所の試験に不合格。さらに練習を重ねて受けた翌年も合格することができなかった。
「さすがに2回目に落ちた時は、心が折れて、もう辞めたいと師匠(濱田浩司 81期S級1班)に話をしました」
しかし師匠からの言葉や練習仲間の先輩たちの姿を見て、「もう一回チャレンジしてみようという気持ちが芽生えてきた」。塩崎は「次がラストチャンス」と不退転の気持ちで臨んだ3度目の試験で、なんとか合格することができた。
養成所は厳しい練習で知られているが、試験に合格するためだけに黙々と練習するつらい2年間を経験した塩崎からすると、「(養成所では)ひとりで練習をやるわけではなかったので頑張れたし、楽しい生活を送れた」という。
その塩崎の競輪デビューが、ルーキーシリーズだ。在所1位の成績も、「これからがスタートだと思っているので、気にすることはない」とプレッシャーに感じていない。そして「出る限りは全部優勝を狙います」と宣言。
一度はあきらめかけた競輪選手になる夢をつかんだからこそ、塩崎が競輪にかける思いは人一倍強い。ルーキーシリーズで彼が疾走する姿を早く見てみたい。
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