カーリング女子日本代表がもたらしたメダル以上に大切なもの。十分に伝えた競技の魅力とカーリング界への好影響 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro
  • photo by JMPA

 リードの吉田夕梨花は、そのショット率の高さで「リードは決めて当たり前」という自身の信念を見事に示して、世界一のリードの座を揺るがぬものとした。今後、「夕梨花選手のように」と語る後進が次々に出てくるに違いない。

 ラウンドロビン序盤、セカンドの鈴木夕湖は思うようにショットが決まらず涙した。だが、そのショット率は80%を超え、全10チームのセカンドのなかで5位と決して悪くない。

 むしろ、スイープやウエイトジャッジで何十回もチームを救ったことを考えれば、その貢献度は計り知れない。彼女のプレーが評されることは、カーリングの魅力を語られることと同義だった。

 サードの吉田知那美は、チームのフロントパーソンであり、コネクターであり、推進力であった。その笑顔とコミュニケーションによって、チームに平静をもたらした。同時に、常に明るく前向きな声かけで、チームメイトのメンタルに寄り添った。

 その術は、カーリング界にとどまらず、多くの人に好影響を与えたことだろう。

 そして、何といっても圧巻だったのは、スキップ・藤澤五月の決定力だ。ラウンドロビンのデンマーク戦やアメリカ戦で決めたレイズ(他のストーンに当てて動かすこと)は、いずれも高い技術とコミュニケーション能力を要する緻密なショットだった。

 また、準決勝では相手に大量4点を奪われそうなピンチを迎え、2本のダブルテイクでしのいだ。そのスーパーセーブは、間違いなくワールドクラスだった。

 それでも、藤澤本人は決勝戦を終えて「悔しさが勝る」とコメント。銀メダルでも、ショット率1位でも決して満足しないのが、藤澤を藤澤たらしめるゆえんなのだろう。

 4人のパフォーマンスを見守ったJD(ジェームス・ダグラス・)リンドコーチ、小野寺コーチ、フィフスの石崎琴美、高田聖也トレーナーらのサポートも申し分なかった。選手、スタッフを含めて最高のチームだった。

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