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高木美帆が専門外の500mで銀メダルが獲れた理由。コーチの言葉で滑りに変化 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

【信頼するコーチの一言】

 この日は、大会直前のPCR検査で陽性になり隔離されていた、ヨハン・デヴィットヘッドコーチが久しぶりにリンクに来ていた。

「ヨハンはずっと表情の変化や、スケートのちょっとした変化に気づいて言葉をかけてくれていたので、それが急になくなった時に自分自身でそれに気づかなくてはいけなくなって、気持ちを奮い立たせるのが大変でした。彼の存在の大きさを感じた部分はありました」という高木。この日、デヴィットコーチには「肩に力が入っている」とだけ言われたと笑顔を見せた。

 ここまで、納得する滑りができていなかった高木には、その言葉は貴重だった。特に500mの場合は「専門外」という思いもあってか、500m用の滑りを意識しすぎてしまうことが多かった。だがこの日はコーチの言葉で、無理のない滑りを意識できた。それが「最初の100mはスタートも、もうちょっと決められるかなという感覚はありましたが、後半の伸びというのはまずまずよかったと思います」という、伸びのある大きな滑りになって表れたのだ。

「この銀メダルは挑戦の証だと思うし、挑戦したことを誇りたいなと思います。ただ、今回はスケジュール的にかなり無理をしている部分も少なからずあるので、このメダルの価値をさらに上げることができるのは、残りの2種目次第かなと思うので、しっかり挑みたいと思います」

 短距離選手の感覚ではなく、中距離選手の感覚の滑りで世界のトップに迫るタイムをたたき出し、銀メダルを獲得した高木。それは彼女の天才ぶりを証明する結果でもある。残り2種目、女子団体追い抜きと1000mの金メダル獲得へ向けて、期待は大きく膨らんできた。

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