初優勝、そして大関昇進――栃ノ心を
栄光に導いた師匠のアドバイス (4ページ目)
千秋楽での表彰式は震えましたね。途中、土俵下でアナウンサーの方から優勝力士インタビューを受けるのですが、ド緊張でしたよ。
「親方、おかみさん、春日野部屋のみなさん、日本のみなさん、私の国のみなさん、応援ありがとうございました!」
この言葉は、私の心からの叫びでした。
日本のことをほとんど知らない私が日本にやって来て、力士になった。ヤンチャしたり、大ケガしたり、もしかしたら、相撲をやめていたかもしれない......。そんな私を、優勝という道に導いてくれたのは、親方をはじめとする、私を応援し、支えてくれたみなさんのおかげです。
本当に、みなさんには感謝の気持ちしかないですし、まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。4年半前の大ケガを考えれば、「奇跡なんじゃないか」とさえ思いました。
この場所の14勝1敗での優勝は、私にさらなる自信をもたらしました。
翌春場所は、関脇となって10勝。鶴竜関に土をつけたことで、殊勲賞もいただくことができました。
迎えた夏場所は、初めての大関獲りの場所となりました。大関に昇進するための条件は、直近3場所での勝ち星が33勝以上なのですが、2場所で24勝を挙げている私は、最低9勝挙げれば、昇進の可能性が見えてきます。
すでに30歳となった私が初優勝したことも驚きでしたが、大関昇進という好機が巡ってくることは、まったく想定していませんでした。相撲人生において、これが最初で最後の最大のチャンスと思っていましたが、私は「多くを望まず、まずはふた桁。10勝を目指そう」と、心に決めて本場所に臨みました。
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