2019.11.18

番組のピンチを救った男が明かす、
スポーツ『SASUKE』の勝利学

  • 本田雄士●撮影 photo by Honda Takeshi 協力/TBS

サスケ君のSASUKE勝利学 第1回

 昨年の大晦日、窮地のTBSを救ったのは27歳のソフトウェア・エンジニアだった。

 その裏には、血も凍るようなドラマがあった。

 22年の歴史を誇る『SASUKE』は、昨年末に放送された第36回大会で史上初のFINALステージ生放送を敢行。あのSASUKEの象徴ともいえる鋼鉄の魔城が聖地・緑山を飛び出し、横浜はみなとみらい・赤レンガ倉庫街にそびえ立った。

 SASUKEの3rdステージ収録日。第36回大会では近年最多となる10人の挑戦者が3rdまで残り、当初は複数プレーヤーのFINAL進出が予想されるなど、現場には楽観的な雰囲気が漂っていた。

 しかし、いざ始まってみれば、終盤の難所、指の力だけで3cmの突起にぶら下がり、そのまま1.8mの飛び移りを二度繰り返す「ウルトラクレイジークリフハンガー」でリタイアが続出。3rdステージ9人目の挑戦者となったゼッケン99番・クライミングシューズメーカー取締役の川口朋広が落下した瞬間、その場のTBS関係者はほとんど全員、青ざめていた。

 ──これ、FINAL進出者が出なかったら生放送はどうなるんだろう?

 絶対に口にはできない。だが、最悪の結末が頭をよぎる。

 もし、本当に誰もFINALステージに到達できなければ、大晦日の夜、『紅白歌合戦』や『ガキ使』の裏側で、TBSは赤レンガ倉庫から、みなとみらいの夜景を延々と流さなければならなくなる……かもしれない。

 そんな重苦しい空気に支配された現場を救ったのが、この夜の最後の挑戦者──栄光のゼッケン100番を背負うIDEC株式会社のソフトウェア・エンジニア、森本裕介だった。

「サスケ君」の愛称で知られる現役最強のSASUKEプレーヤーは、会場中、そしてTBS中の期待と重圧を一身に背負いながら、事もなげに超難関といわれる3rdステージをクリアしてみせた。

 そのとき、思ったのだ。

 数々のオリンピアンですら到達できないSASUKEの3rdステージまでいくようなプレーヤーは皆、半分くらい人間をやめている。が──、

 そのなかでも、森本裕介は役者が違う、と。

“究極の一発勝負”であるSASUKEで、圧倒的な強さを発揮する「サスケ君」。彼の「本番力」、成功から逆算する「準備力」、その思考のプロセスや具体的なSASUKEのトレーニング方法までを明らかにする緊急連載スタート。

2018年の大晦日に放送された第36回大会で、森本が出場者100人中唯一のFINALステージ進出を決めた瞬間