2019.11.24

「自分より人気があるんじゃないか?」
御嶽海が嫉妬したのは母だった

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

向正面から世界が見える~
大相撲・外国人力士物語
第5回:御嶽海(3)

 先場所の大相撲秋場所(9月場所)で2度目の優勝を果たした関脇・御嶽海。

“ここ一番”の勝負強さに加えて、明るいキャラクターで人気の御嶽海は、20歳の時に日本国籍を選択しているが、日本人の父とフィリピン人の母との間に生まれたハーフ。フィリピンで生まれ、幼少期はフィリピンで過ごしていた。その後、現在も実家がある長野県で暮らすことになって、相撲と出会う。

 本場所となれば、実家のある長野から母マルガリータさんを中心とした大応援団が頻繁に駆けつけ、熱烈な応援で御嶽海を後押ししている。

 九州場所でも注目を集めた御嶽海。そんな彼の知られざる”実像”に迫った――。

         ◆         ◆         ◆

 2015年2月、出羽海部屋に入門。3月の春場所(3月場所)から、僕の戦いが始まりました。

 いきなり幕下10枚目となった僕は、2番相撲で大翔鵬に黒星を喫したものの、6勝1敗。翌夏場所(5月場所)では、番付が東幕下3枚目まで上がりました。その場所では、1番相撲で大学時代にしのぎを削った正代と対戦。この一番こそ負けてしまいましたが、プロの世界のリズムにも慣れてきて、再び6勝1敗という成績を残すことができました。

 その結果、翌名古屋場所(7月場所)で新十両に昇進できたのは、ラッキーだったと思います。関取と呼ばれる地位に、わずか2場所で上がることができたのですから。

 しかも、新十両となったその場所で、優勝することもできました。対戦相手は、この前まで幕内の土俵で相撲を取っていたり、テレビを通して見ていた人ばかり。僕にとっては、無我夢中の日々でした。

 十両も2場所で通過。九州場所(11月場所)で新入幕を果たしました。ちょうど1年前、インカレに出ていた僕が幕内力士になっているとは……。正直、自分でも驚きでした。もちろん、関取の象徴・大銀杏を結うことはまだできませんでしたけど……。

 ここまでとんとん拍子の出世のように思われますが、幕内力士の底力はすごかった。初めて幕内上位に上がった2016年の名古屋場所では、3横綱(白鵬、鶴竜、日馬富士)との対戦もありましたが、5勝しかできなくて、”プロの実力”を思い知らされました。初めて三役(小結)に昇進した九州場所でも6勝9敗と、プロの分厚い壁に跳ね返されてしまいました。