太田雄貴、北京五輪銀メダルまでの苦闘の道。先輩への想いを胸に (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Tohshimi
  • photo by AFP/AFLO

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 北京五輪の2回戦からの相手は、ランキング10位の太田にとってすべて格上。2回戦のチェ・ビョンチョル(韓国)は、五輪3カ月前の5月、高円宮杯で負けていた選手で、3回戦で当たると予想したペーター・ヨピッヒ(ドイツ)は当時世界ランキング1位。これまで5戦5敗の相手だった。

 1回戦を15対4で勝ち、自分の調子のよさを確信した太田が「最大の山場」と考えていたのは2回戦のチェとの戦いだった。3カ月前の高円宮杯では、11対11まで競り合いながら、そこからあっさり4ポイント連取されるイヤな負け方をして、苦手意識が生まれていた相手だ。

 その2回戦は序盤で5対1になる滑り出しだったが、その後連続ポイントを取っても突き放せない展開。13対12からの微妙な突きが太田のポイントとなったが、チェのビデオ判定の要求で覆って13対13になると、気落ちした太田は再びポイントを奪われ、13対14と王手をかけられた。

 その時、太田の頭の中にはチェに敗れた高円宮杯の記憶が蘇っていた。「同じような悔しい負け方は繰り返したくない」と考えて冷静さを取り戻した太田は、次のポイントをいつもなら外してしまいそうな突きで決めた。そして14対14からの1本勝負では、頭を下げる反則ギリギリの姿勢で1本を取りにいった。

 この試合、チェはすでにイエローカードが1枚出ていて、もう一度反則をすれば太田のポイントになる。それを踏まえて打ったギャンブルとも言える攻めが奏功して、逆転勝利をもぎ取ったのだ。

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