平成最後の本場所で貴景勝の大関獲りは実現するか――錣山親方の視点

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

元寺尾・錣山親方の『鉄人』解説
~2019年春場所編

元関脇・寺尾こと錣山(しころやま)親方が、本場所の見どころや話題の力士について分析する隔月連載。今回は3月10日から始まった春場所(3月場所)の注目ポイントを解説してもらった――。

 平成最後となる大相撲の本場所、春場所(3月場所)が3月10日からスタートしました。

 その前に、まずは初場所(1月場所)の4日目に引退を発表した横綱・稀勢の里について触れておかなければいけませんね。

 初場所のこの連載において、稀勢の里については、直前に行なわれた横綱審議委員会稽古総見の様子などを参考に「(勝ち星を重ねるのは)正直、厳しい」と述べました。その推察どおり、稀勢の里は初日から3連敗。残念ながら、"引退"を決断する運びとなりました。

 引退会見で「わが相撲人生に一片の悔いもございません」と語るシーンを見ましたが、涙を堪え切れない横綱の姿を見て、実は"悔い"があったのではないか、と感じました。

 私は、39歳まで現役を務めて、2002年秋場所(9月場所)の千秋楽に引退しました。その際、「(現役の力士として)もう土俵に上がることはないんだな」という寂しさはありましたが、「やり切った」感が強かったので、涙は出ませんでした。「最後は笑顔で......」と決めていた、というのもあります。

 ただ、稀勢の里は"横綱"ですからね。それだけ、背負っていたものが大きかったのだと思います。ほんとうにお疲れさまでした。

 さて、春場所です。

 他の力士より一歩抜けているのは、現役力士の第一人者である横綱の白鵬です。場所前、弟弟子の幕内・石浦を担いでスクワットをしたり、積極的に出稽古に行ったりと、順調に稽古を重ねてきたと思います。相撲のスピードというのも、相変わらずすばらしいものがあります。

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