自称・オーバー稽古症候群。38歳・豪風が決断した十両からの再出発 (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・文 text&photo by Takeda Hazuki

 とはいえ、28歳のときに小結をひと場所経験しただけで、番付は幕内上位から中位を行ったり来たり。もうひとつの目標である、三役定着にはなかなか至らなかった。入幕以来、横綱にも一向に勝てず、30歳を過ぎてからは停滞状態が続いた。

 そうした状況のなか、豪風にとって起死回生の出来事となったのが、痛めていたヒジの手術だった。その思い切った決断により、ヒジへの負担がなくなり、突き押しの威力が一段と増した。

 そして2014年名古屋場所(7月場所)、横綱・日馬富士から初めての金星を挙げた。さらに、同場所では9勝6敗と奮闘し、翌秋場所(9月場所)では悲願の新関脇昇進となった。それぞれ、35歳にしての快挙だった。

「20代の頃は、自分が35歳を過ぎて、相撲を取っているイメージなどなかった」

 豪風にとって、そこからは未知なる世界への挑戦となった。が、年齢による体力的な衰えもある中、厳しい勝負の世界にあって、さすがに鍛え上げた体も悲鳴を上げていた。三役からはすぐに陥落し、またもヒジを痛めてしまった。

 しかしそこでも、豪風は土俵から降りることは考えなかった。2017年4月、現役続行のために、再び手術に踏み切った。

 38歳となった豪風には、見習うべき先輩力士がいたからだ。冒頭でも触れた、今場所の初日に対戦した安美錦である。39歳で再入幕を果たした彼に、大いに刺激を受けた。

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