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自称・オーバー稽古症候群。
38歳・豪風が決断した十両からの再出発

  • 武田葉月●取材・文 text&photo by Takeda Hazuki

「荒れる春場所」とも称される大相撲3月場所。大阪で行なわれているこの場所の初日、元関脇・豪風(たけかぜ/38歳)は、十両の土俵で、同じくベテランの元関脇・安美錦(あみにしき/39歳)と対戦した。

十両に陥落するも、現役続行を決めた豪風十両に陥落するも、現役続行を決めた豪風 今年の初場所(1月場所)まで幕内を76場所(約12年)務めた豪風だったが、その初場所は前頭13枚目の地位で5勝10敗。大きく負け越して、ついに十両に降格することが決まった。

 一方の安美錦も、再入幕を果たした昨年の九州場所(11月場所)では勝ち越して敢闘賞を受賞。「39歳、涙の敢闘賞」と話題となったが、先場所は古傷のヒザの具合が悪化して、3勝9敗3休の成績で再び十両に陥落した。

 そうした両者のこれまでの対戦成績は、豪風の16勝17敗。すべて幕内での対戦だったが、34回目にして初めて十両の土俵でぶつかった。

 勝利を飾ったのは、豪風。立ち合いからもろ手突きで安美錦を攻め立て、一気の突き押しからはたき込む、一方的な相撲だった。

「たけかぜ~」

 注目の"77歳対決"を制した豪風へのエールが館内に響いた。十両の取組に懸賞金はつかないが、その声援を背にして、豪風は胸を張って花道を引き上げていった。

 その表情に、十両で戦うことへの悲壮感はなかった。久しぶりに思い描いた相撲が取れたことに対する満足感が漂っていた。

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