あわや102年ぶりの新入幕V。石浦はオーストラリアで相撲に目覚めた (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 ちょうどそのころ、角界に幕下付け出しで入門した山口が、初土俵から3場所で幕下全勝優勝を達成。新十両場所でも9勝6敗と勝ち越す活躍を見せていた。インターネットでチェックしていた大相撲中継の画面の中で、高校時代から切磋琢磨した友が土俵で輝いていた。そんな姿を見て、相撲への想いを抑えながら違う道を模索しようとしていた石浦は、もう一度土俵に戻ることになる。

「人生はたった1回ですから、やりたいことをやらずに生きていくのは逃げることだと思いました。どうなるかわからないですけど、勝負しないと絶対に後悔すると思ったんです。やらないで後悔するより、やって後悔した方がいいですから」

 すぐに父に決意を伝え、横綱・白鵬の内弟子として12月に宮城野部屋への入門が決まった。入門後は、近くにいながら果てしなく遠い横綱の存在が糧になった。最高位を極め、優勝回数、連勝など数々の偉業を達成しながらも、地道に稽古に打ち込む姿に「本場所での集中力、常に相撲のことを考えた生活、あれだけの記録を残しながらもなお、努力を怠らない姿は本当に模範になります」と感心しきり。横綱はまさに生きる教科書だった。

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