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【大相撲】旭天鵬、引退。偉大な横綱たちを裏で育てた「先駆者」 (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 遡(さかのぼ)れば、3年前の2012年夏場所(5月場所)で、37歳8カ月での幕内初優勝という快挙を遂げて以降、常に「引退」という文字が目前にチラついていた。それでも、優勝した当時3歳だった長女、生後10カ月だった長男の成長をエネルギーにして、日々の稽古を黙々とこなし、幕内の地位を保ってきた。

 おかげで昨年9月には、60年ぶりの40歳の幕内力士誕生と、旭天鵬は再び脚光を浴びた。さらに今年の夏場所には、魁皇の記録(1444回)を抜いて幕内最多出場記録を更新した(最終的には通算1470回)。そして、もし幕内で秋場所(9月場所)を迎えていれば、幕内在位100場所、その初日には41歳の幕内力士誕生という偉業も成し遂げられ、"レジェンド"への関心は一層高まったはずだが、それは夢に終わった。

 千秋楽の翌日、気持ちの整理がついた旭天鵬は「現役引退」を公に表明した。

「今は、穏やかで晴れやかな気持ちです。故郷のモンゴルでテレビ中継されるのは幕内だけ。だから、幕内力士であること、そこにこだわりました」

 会見を終えると、会見場に訪れた記者ひとりひとりと握手を交わした旭天鵬。誰に対しても明るく、優しさをもって接する彼らしい光景だった。

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