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全日本体操8連覇の内村航平。
孤独な王者が待ち望んでいるもの (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Nakamura Hiroyuki

 それは5連覇中の世界選手権へ向けた試みでもある。世界が進化することを予測しながら、常にその先頭を走り続けたいという、絶対王者としてのプライドの表れだった。

 たが、予選で好結果が出たことで、決勝ではモチベーションを保つことが難しくなった。「朝起きた時から気持ちが高まらず、このままいつもと同じ演技構成で行くとケガをしそうな感じがした」という内村は、各種目15点平均の得点をとれる演技構成に変更。「ミスなくやっていこうと決めた」のだ。

 決勝の最初の種目のゆかで内村はミスをした。最初の技の着地で大きく動いてしまったほか、3回も着地を乱したのだ(得点は15・250点)。これは内村にすれば珍しい不調だった。続くあん馬とつり輪は予選と同じ構成でそれぞれ15・100点、14・950点。そして、跳馬では予選で挑戦した「リ・シャオペン」を回避してDスコア5・6点の「シューフェルト」に難度を落とし、14・950点に止まった。

「ここまで気持ちが上がってこないのは初めてです。初日に調子が上がってリ・シャオペンを成功させたので、気持ちを少し出し切ってしまったのかなとも思います。そのうえ、1種目1種目消化していくうちに、筋肉の疲労が出てきていた。それで、前もって決めていた演技構成より下げてやらなければいけないなと思いました」

 こう話す内村は、平行棒でも技の難度を落とし、最後の鉄棒でも離れ技を少なくした。6種目合わせたDスコアは、予選より2・2点低い36・8点。それでも総合では2位の田中佑典を0・10点上回る90・550点を獲得した。この結果、予選との合計得点を182・700点にし、田中に2・150点差をつけて、内村は8連覇を達成した。

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