【月刊・白鵬】横綱が史上最多優勝よりも喜んだ出来事とは (3ページ目)
実は、初場所ではさらにうれしいニュースがありました。内弟子の石浦(宮城野部屋)が、来場所の十両昇進を決めたのです。
幕下西6枚目の石浦は、初場所で6連勝を飾っていました(※)。迎えた7番相撲は、学生横綱に輝いたこともある正代(時津風部屋)との全勝対決。幕下15枚目以内で7戦全勝した場合、十両に昇進できるという内規がありますから、石浦が勝てば、文句なしに十両昇進が決まる一番でした。
※幕下以下の力士は、通常1場所で7番の相撲を取る。
「なんとか勝って、(十両昇進を)決めてくれ!」
私はそう祈って、その一番を見つめていましたが、石浦は敗戦。6勝1敗で十両昇進の夢ははかなくも消えたと思いました。が、なんと場所後に十両から引退力士が出たことで、石浦の新十両昇進が決まったのです。その幸運には、自分の優勝以上の喜びを感じましたね。
石浦は、以前幕内でも活躍した同じ宮城野部屋の山口(元大喜鵬/現三段目)と、日大相撲部でチームメイトでした。卒業後、すぐに宮城野部屋に入門した山口と違って、石浦はオーストラリアに留学していました。それが、山口や他の学生出身力士の活躍が刺激になったようで、1年ほど遅れて入門してきました。
身長173cm、体重107kgと小柄ながら、全身がバネといった体つきで、巧みな技を次々に繰り出してきます。相手力士をうまくかわし、土俵を目いっぱい使った精力的な相撲が持ち味です。初場所では、特に動きがキレていました。「チャンスをモノにしたい!」という気持ちも前面に出ていたように思います。
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