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【月刊・白鵬】史上最多優勝記録に挑む、横綱の「本音」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 以前から感じていることですが、沖縄の人のスピリットは、モンゴル人のそれに近いものがあります。熱い血が流れているというか、人をもてなす流儀などが、なんとなく似ているんです。

 沖縄民謡に代表される音楽もいいですよね。あれを聞くと、モンゴルのことを思い出したりするんですよ。ちなみに、沖縄県出身のバンド、BEGINの「三線の花」は、カラオケで歌う私の十八番です。

 何はともあれ、プロスポーツ選手は、体を休めることも大切だと、私は常々思っています。横綱になって7年半が経ちますが、この間、私が一度も休場していないのは、オンとオフの切り替えができているからではないか、と思っています。というよりも、そのように務めている、といったほうが正しいかもしれません。

 実際、今回も短い時間でしたが、休暇をとってしばし相撲から離れたことで、「よし、今年もがんばろう!」という気持ちになりました。スポーツに限らず、仕事などもそうだと思うのですが、全力を尽くして、最大の成果を挙げるためには、休むことも大事なのではないでしょうか。

 こうして迎えた2015年、1月3日から稽古が始まりました。スローペースながら、自分なりにしっかりと体を作っていましたが、その際、メディアの方などに「2015年の目標は?」と問われることには、ちょっとだけ苦痛を感じていました。というのも、通算32回目の優勝は、心身すべての力をつぎ込んで手にしました。だから本音を言えば、その戦いが終わって、もう次の戦いが始まってしまうのか......という思いもあったんです。それで、いきなり次の目標を聞かれても困るというか、「ちょっと考えさせてほしい」というのが正直なところでした。

 けれども、そんな気持ちが、一門の連合稽古に参加したり、出稽古に行って若手力士の相手をしたりしているうちに、徐々に変わってきました。

 史上最多の69連勝の記録を持つ、角聖・双葉山関(1930年代から1940年代前半にかけて活躍した第35代横綱)は、年2場所の時代に通算12回の優勝を遂げました。それを抜いたのが大鵬関なのですが、13回目からの優勝はまさに未知の世界。そんな誰も歩んだことのない道を、大鵬関は32回という数まで歩み続けたわけです。そのときの気持ち、心と体の持ち方は、大鵬関にしかわからない部分でしょう。

 私はたまたま大鵬関の記録に並ぶことができましたが、その心持ちは到底知ることはできません。しかし、あと2、3年がんばって、さらに優勝を積み重ねることができれば、少しくらいは大鵬関の気持ちがわかるようになるのだろうか――今は、そうした思いが強くなっています。できることなら、大鵬関が感じたもの、大鵬関にしか味わえなかったことを体感してみたいな、と思っています。

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