新国立競技場に賛成できない最大の理由
10月特集 東京オリンピック 1964の栄光、2020の展望(4)
生まれ変わろうとしている国立競技場。さよならイベントは5月末にすべて終了した。当初の予定では7月から解体工事が始まることになっていた。しかし、いまなおそれは始まらない。解体に手を挙げるゼネコンがなかなか現れず、現れたら現れたで、発注元の日本スポーツ振興センターとの間に談合疑惑が浮上。国会でも追及されることになった。事は順調に進んでいない。国立競技場はどんなに早くても12月中旬までは、現在の姿を残すことになると言われている。
5月31日、さよならイベントで満員となった国立競技場 現国立競技場は不思議なもので、巨大なスタジアムであるにもかかわらず、思いのほかひっそり佇(たたず)んでいる。取り壊しを待つ身だからではない。従来からそうだった。
スタジアムはいわばコンクリートの塊だ。昔のスタジアムは特にそういう傾向がある。国立競技場も例外ではない。だが、威圧感を覚えるのは、バックスタンドの背後にある青山門付近から眺めた時ぐらいだ。何より、その外観全体を仰げる場所が限られている。多くの樹木にさえぎられているからだ。
国立競技場のある場所は、ご存じの通り神宮外苑と呼ばれる。内苑は原宿駅の裏手に広がる明治神宮。両者が対の関係にあるのは言うまでもない。神宮外苑は別名、「神宮の杜」と言われる。首都東京のド真ん中にありながら、豊かな緑に包まれたスケールの大きな公園風のスペースになっている。鮮やかな紅葉で知られる銀杏並木、そして聖徳記念絵画館をぐるっと囲む周回道路は、都内指折りのランニングコースとして知られている。
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