【スキージャンプ】試合当日、髙梨沙羅を襲った「3つの不運」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Watanabe Kaoru/JMPA

 王者のショーン・ホワイト(アメリカ)が得点を伸ばせず4位に終わり、平野歩夢と平岡卓が2位と3位になってメダルを獲得したという男子スノーボードの速報で沸いたジャンプ競技場のミックスゾーン。

 王者・ホワイト4位の驚きに続いて、今度はこちら側の驚きとなって降りかかってきた――。

惜しくもメダルを逃し、悔しさを滲ませた髙梨沙羅惜しくもメダルを逃し、悔しさを滲ませた髙梨沙羅 1本目3位からの逆転を信じていた髙梨沙羅が2本目も98.5mに止まり、この時点でダニエラ・イラシュコ(オーストリア)に次ぐ2位にランクされたからだ。

 当然獲るだろうと思われていた金メダルを逃しただけではなく、メダルさえ逃してしまいそうな危機。1本目2位のコリン・マテル(フランス)は97.5mながらも飛型点で髙梨を上回ってメダルを確定させると、最後のカリナ・フォクト(ドイツ)も97.5mながら、ウインドファクターの加点で逃げきり、初代五輪女王の座に輝いたのだ。

 髙梨は結局4位。今季のW杯は13戦10勝で、世界ジュニア選手権も含めて表彰台を外したことはなかっただけに、誰にとっても予想外の結果の終わった。

 ソチ入りしてからの髙梨は、絶好調といえる状態ではなかった。彼女が「ファーストコンタクトが重要」という最初の公式練習の1本目では98mを飛んで飛距離点とウインドファクターの合計得点ではトップに立ったが、その後はイラシュコに首位を奪われていた。それでも助走姿勢を修正し、3回目の公式練習だった本番前日には3本中2本で1位になり、もう1本は2位と、試合へ向けて順調な仕上がりを見せていたのだ。そしてこの日の試合前の試技でも、103mでトップだった。

 だが、この日の試合は追い風から横風、向かい風と目まぐるしく変化する難しい気象条件だった。

「今日は動きにキレがなかった気がする」と言う髙梨は一本目のジャンプを、「少し長くジャンプ台をつかまえなければいけないのだけど、急激に立ち上がり過ぎてしまったというか、踏み切りで前に突っ込み気味になってしまう悪い癖が出てしまいました」と振り返った。それでも飛距離は100mまでいったが、条件は秒速0.3mの追い風。特にK点あたりは強めの追い風だったのか、寸前にたたき落とされてしまうような着地になり、課題にしていたテレマークを入れられなかった。

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