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【レスリング】生まれ変わった吉田沙保里が『カレリン超え』に挑む (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

「作戦どおり! またひとつ、自信になりました」

 オリンピック後、吉田は晴れ晴れとした表情で語った。

 北京オリンピックまでの吉田には、自分が負けるイメージなどまったくなかっただろう。ところが2011年の世界選手権決勝でトーニャ・バービック(カナダ)に1ピリオドを奪われ、その年の暮れに行なわれた全日本選手権では、高校生の村田夏南子に追い詰められた。高速タックルで敵をマットに沈め、フォールの連続で勝ってきた姿を追い続けてきたファンにとって、ロンドンでの吉田の試合展開は、少し物足りなく感じたかもしれない。

 しかし、まったく別のスタイルで世界を制することができたことで、吉田には新たな考え方が芽生えた。

「1ポイントならいつでも獲れる。だから必要以上に攻め込まず、相手の出方を見極める。1点差でも勝てばいい」

 ロンドンでの不安を乗り越えた吉田は、戦術面だけでなく、精神面にも変化が生まれた。まずは4年後のリオデジャネイロ・オリンピックに向けて、『東京・愛知ダブル拠点計画』という強化策を打ち出したのである。

「このままの環境を続けていては、4年間、気持ちが持たない。ときどき(それまで拠点とした)愛知の至学館大学にも戻るが、東京でいろいろ出稽古に行き、ひとりで海外にも行って練習したい」

 さらに吉田は、初めて周囲に「休みたい」ともらすようにもなっている。アテネでも北京でも、表彰台から降りるやいなや、「連覇します」「目標は3連覇!」とあっけらかんと宣言し、燃え尽き症候群など微塵も見せなかった女王が、である。

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