【レスリング】吉田沙保里「負けた試合は、無心じゃなかった」
敗戦から10日。冷静にあの日の試合を振り返る吉田沙保里 5月27日に東京で行なわれた『女子レスリングワールドカップ』で黒星を喫し、北京五輪前から続いていた連勝記録が58でストップした女子レスリング55キロ級代表・吉田沙保里。衝撃の敗戦から10日――。ロンドン五輪まで残り2ヵ月を切った今、どんな心境なのだろうか。卒業後も練習拠点とする至学館大学レスリング場で、吉田沙保里は敗因を冷静に語った。
――あの敗戦から10日が経ちましたが、今の心境は?
吉田 大会が終わって数日間は、練習にも身が入りませんでした。でも、自分には助けてくれる仲間がいました。ブログにも全国から励ましのメッセージがたくさん寄せられて、気づいたんです。自分はこんなにみんなから応援されているんだって。それなら、いいところを見せないと。アテネ五輪のころのような初心に戻って、頑張ろうと思えるようになりました。
――負けた試合を振り返っていただくと。
吉田 一番に思ったのは、『慣れの怖さ』ですね。なぁなぁな気持ちで、なんとなくマットに上がってしまいました。試合が始まっても、『ガムシャラに攻めまくる』というのではなく、相手の出方を見たり、時計を『チラ見』したりして......。
――いつもとは違っていた?
吉田 はい。昨年9月の世界選手権(トルコ・イスタンブール)決勝で、カナダのトーニャ・バービック選手と対戦した試合が頭をよぎったりしていました。
――58連勝中、ピリオドを失った唯一の試合ですね。
吉田 そうです。あのときのことが思い浮かんで、試合中も頭で何かを考えてばかりいました。相手の懐(ふところ)に入って返されたらどうしよう、とか。今、取れば何ポイントで、返されて何ポイントだ、とか。あと、残り時間はどれぐらいだろう、とか。無心でなければいけないのに......。ドンドン攻めて、最後まで攻め抜いて、勝つことだけに集中しなければいけなかったんですけどね。
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