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「引退したい」「まだできる」世界女王・荒川静香が迷いを抱え続けたトリノ五輪前の1年間 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama

【世界女王になって生まれた迷い】

 その後、一時は心に浮かんでいた競技引退を翻意し、早稲田大学卒業後はプリンスホテルに所属し、競技続行を決めた2004−2005シーズン。

 新採点システムに対応するルール変更もあったなか、GPシリーズ初戦のNHK杯は「スケート靴を替えたばかりで朝の練習まで大会に出場するかどうか迷っていた」という状況だった。それでもSPは2位に10点以上の大差をつける64.20点で首位発進。フリーは「全体的にセーブしすぎて勢いがなかった」と、3回転フリップで転倒するミスも出て安藤美姫に次ぐ2位の得点だったが、合計は179.06点としGPシリーズ初優勝を果たした。

 次のロシア大会は2位になると、GPファイナルもイリーナ・スルツカヤ(ロシア)に次ぐ2位。得点は150〜160点台にとどまったが安定した大会成績を残した。

 GPファイナルから痛めた右足のケガが悪化するなか出場した全日本選手権。SPは「滑るからには精一杯やって悔いを残さないようにしたい」とレベルを落とさない構成で67.68点を獲得し1位で発進する。だが、フリーは「滑りたい気持ちはあるけど、身体のことを考えると我慢をして、完璧に直して次の練習ができるようにしたい」と棄権の判断を下した。

 それでも、前回大会の優勝とGPファイナル2位の結果が評価され、世界選手権には安藤や村主とともに代表に選ばれた。しかし、連覇がかかるその舞台は、SPではジャンプでミスが出て5位発進。フリーもジャンプでミスが相次ぎ、順位を総合9位に落とした。

「今回は試合に向けた準備ができていないままで来てしまった。前年よりジャンプの難易度を落として臨んだからこそ、悔いが残っています」

 演技後そう話した荒川は、その翌日にはこのシーズン中の揺れる気持ちを明かした。

「本気で試合に臨める準備ができていなかったと思います。前年の優勝で気持ちが満足してしまい、このままアマチュアを引退したいという気持ちと、でも、なんとなくまだちょっとできるかなという気がして続けようと思う気持ちがふらふら行ったり来たり。どうしても一本に絞れなかった。周囲から言われても自分の気持ちがそこへ向かうものではないですが、今回の結果はあらためて『このまま終わりたくない』と心の底から思うきっかけになり、あと1年、本気でスケートに取り組めたらいいなと思うようになりました」

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