宇野昌磨がミラノ五輪を見てあらためて思ったこと スポーツとしてのフィギュアスケートの魅力とは (2ページ目)
インタビューに応じた宇野昌磨 photo by Sunao Noto(a presto)この記事に関連する写真を見る
アイスショー『Ice Brave』でも、アイスダンスは暗中模索の新たな挑戦だったと言えるだろう。宇野は荒々しい風貌で、目を血走らせるタイプではない。しかしやっている挑戦は、それ以上にタフだ。
「座長ということで、最初は"自分が引っ張っていかないといけない""自分が言わないと始まらない"って思いはあったんです。でも、今は何も言うことなくて、自分も一員で毎日楽しく練習させてもらっている感じです。初めは気を張っていたんですけど、やっぱり僕たちが楽しいと思えるか。それで、皆さんにも楽しんで、驚いて、感動してもらえる。大切なことは、チームメンバーの仲がいいってことですね」
宇野は、まるで少年漫画の主人公のようなことを言う。
彼の言葉選びの面白さは、Xでの人気爆発でも明らかになっている。ミラノ・コルティナ五輪では、「4回転の神」イリア・マリニンが信じられないような失敗の連続でメダルを逃したときのポストが話題になった。
「オリンピックには魔物がいるとよく言われるので、人々はそろそろゾルトラークを覚えるべきだと思う」
「ゾルトラーク」とは人気漫画『葬送のフリーレン』に出てくる魔法。もとは魔族が人間に対抗するためにつくったが、魔法使いが魔族を倒すための攻撃呪文に昇華させた。
「あのポストは深く考えていなかったんです。僕は(オリンピックで)魔物と対面する機会はなかったし、みんなが魔物のどんなものを指しているかわからないですけどね。SNSでも発信しているように、僕は"試合期間はゲームができるからラッキー"ってくらいに思っていましたから。"2週間も拘束されちゃって、めっちゃゲームできるじゃん!!"って」
宇野はそう言っておどけたが、それは怠惰さでも、図太さでもないだろう。スケートにはどこまでこだわっても、勝負に執着はなく、「練習以上のものは試合ではできない」と悟った境地か。あるいは、それこそがゾルトラークと同義かもしれない。
その精神は、プロのスケーターとなってからも受け継がれているが、変化もあったという。
「前よりもスケートを見る機会は多くなって、それは現役引退したからこそ、かもしれません。先輩方にも『引退してからの方がスケートを頑張らないといけない』と言われていましたけど......現役のときは、時間があればゲームできてラッキーでしたが、今は自分がスケートすることも、スケート以外の仕事をすることも、自分の時間だけでなく、みんなの時間を使って成り立っていることで、より責任感は出てきたというか。現役のときだったら、朝一の練習で『今日は気分が乗らないな』ってありましたけど、今はそういう考えにならない。『やれ』って言われてやっているわけでなく、やりたいからやっている。こういうことをできるようになりたい、という気持ちが自然と湧いてくるんですよ」
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