坂本花織、現役最後の全日本の結末は? 5連覇&五輪代表内定へ「1分1秒を惜しみなく」 (3ページ目)
【5連覇よりもまずは五輪内定】
瞠目すべきは、プログラムコンポーネンツだった。構成力、表現力、スケーティング技術の3つで評価されるが、坂本はすべて9点台だった。スケーティング技術に至っては、9.46点と他の追随を許さない。
4回転やトリプルアクセルのような大技のジャンプを跳ばなくても、彼女がトップに君臨し続ける理由だろう。その実力で、女子シングルでは56年ぶりとなる世界選手権3連覇を達成しているのだ。
「ひとりだったら、この景色は見られなかったと思います」
坂本の言葉は情感がこもっていた。氷上での坂本の真っ直ぐな生きざまは、熱い声援を受ける。それに応えるような渾身の演技が、さらにファンを感動させる。そのサイクルこそ、彼女にスターの輝きを与えた。
「公式練習から、自分のバナーを振ってくださる方が何人かいてうれしくて。それが6分間練習を終わった頃には増えていて、演技が終わった直後はもう『おおー』っていう感じで、リンク全体がオレンジ一色に染まっていました。最後の全日本でこれだけの人が応援してくれていたんだって実感できたのが、すごくうれしかったです」
フリーに向けても、彼女は観客との呼吸のなか、ベストの演技に挑む。全日本5連覇の偉業達成はかかるが、それはやりきった結果でしかない。
「今は連覇よりも、オリンピック内定。そこを一番に考えています。明後日(21日)のフリーで決まるので」
坂本は言う。ひとつの時代を彩った日本人女子スケーターの最後の全日本は、どんな結末になるのか。
「試合でいい気分でやっている時は、曲がゆっくり聞こえるんです。今日のショートもそれがあって。ステップの最中もターンをしっかり考えながら、表情だったり、ジャッジへのアピールだったり細かく考えてできました。今までになく気持ちに余裕があったなって」
日本フィギュアスケート界を背負ってきた女王には、勝利につながる風景がある。それにめぐり会えた時の彼女はすこぶる強い。スケートそのものに祝福されたような演技ができるからだ。
「フリーでは、とにかく最後まで集中が大事。自分の演技に没頭できるように。国内では最後の試合になるので、1分1秒を惜しみなく」
12月21日、坂本はフリー最終滑走で登場する。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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