「今日、いい感じじゃん」鍵山優真の自己ベスト更新をあと押しした自己陶酔マインド (3ページ目)
【自分を信じて世界王者へ】
鍵山は、初のGPファイナル優勝に一歩近づいた。世界王者イリア・マリニンがクワッドアクセル、4回転ルッツ+3回転トーループで得点を伸ばせず、まさかの94.05点で3位スタートになっているのだ。
「(マリニンとの点差は)何も考えずにやりたいです。結果は、パフォーマンスに応じてついてくるものだと思うので」
鍵山は充実感に満ちた表情で言い、こう続けている。
「グランプリファイナルはひとつの目標点で、いい演技を出せたのはうれしいです。でもシーズン全体で考えると、通過点でしかありません。ショート、フリーをそろえるのが一番大事なところで、喜ぶのは今日で終わり。明日、明後日は気を引き締めて、せっかくつかんだチャンスを逃さないように。自分に打ち勝って頑張りたいです」
本当の鍵山は、虚栄心など少しも感じさせない。しかし、自分を強く信じることによって、内にあるものを目覚めさせられる。美しさを競うスポーツにおいて、その現象は必然だろう。自分ではない何かに変身するには、陶酔もトリガーになるのだ。
「どれだけ練習を積んでも、完璧には自信を持てません。でも自信を持たないとうまくいかない。前向きな気持ちが、今日はうまく出たのかなって思います」
12月6日、20時46分。鍵山は最終滑走で、フリーのリンクに立つ。自分の輝きを信じて。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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