検索

【フィギュアスケート】樋口新葉が痛みと不安のなかで見せた意地「やんなきゃ」「最後は気持ち」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【演技直後に流した涙】

 11月8日、大阪。GPシリーズ第4戦NHK杯のフリースケーティングで、今季限りでの現役引退を発表している樋口新葉(24歳/ノエビア)は、力の片鱗を見せていた。そのリカバリーは、さすが歴戦の猛者だった。

11月8日、NHK杯フリーで演技する樋口新葉11月8日、NHK杯フリーで演技する樋口新葉この記事に関連する写真を見る

「昨日のショート(プログラム)と違って、地に足がついた感覚で滑ることができました。自分の最高のパフォーマンスができる状態ではない試合で、滑りきれたのがうれしかったですね。ここまで滑れたって」

 樋口は振り返るが、演技直後は氷上に膝をついて頭をうずめ、数秒間、微動だにしなかった。心身ともに疲弊したか。起き上がった彼女は涙を流していた。

 今シーズン、樋口は右足甲のケガに悩まされ、痛みを抱えながらの練習を続けていたという。現役最後と決めたシーズンは出遅れ、公式戦は約2カ月ぶりだった。試合勘も鈍ったまま、痛み止めの薬を服用しながらの演技だ。

「最後は気持ちだと思っているので、気持ちで持っていけるように」

 樋口は言う。腹のくくり方が彼女らしい。その気概で、彼女はいつだって瀬戸際で流れを逆転してきたのだーー。

1 / 3

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る