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【フィギュアスケート】樋口新葉が痛みと不安のなかで見せた意地「やんなきゃ」「最後は気持ち」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【大観戦のステップシークエンス】

 そして翌日のフリー、樋口は実力の一端を見せた。冒頭のダブルアクセル+3回転トーループを成功すると、曲のテンポに乗って流れをつかむ。3回転ルッツ、3回転ループをどうにか降りて、寄る辺のスピンにつなげる。手拍子が場内に鳴り響くと、3回転サルコウも着氷した。

「フリーはショートより自信を持って滑れる練習を重ねてきた。"全部出しきれば大丈夫"と思っていました。落ち着いて呼吸できて演技できたのがよかったです」

 ただ、そのあとの3回転ルッツは転倒し、予定していたコンビネーションもつけられなかった。3回転サルコウは2回転になって、どうにか2回転トーループもつけたが、最後の3回転フリップも4分の1回転不足。後半に入って体力が落ちた。それでもスピンはみごとで、ステップシークエンスでは観客の大歓声を浴びた。

「滑っている時は集中して周りの声は聞こえなかったんですが、(体力的に)一番苦しいステップで応援が聞こえたのがうれしかったです」

 樋口は明るい声で言う。フリーは115.12点と8位だった。ルッツ、フリップの右足トージャンプが痛みで練習から積み上げられないなか、一歩前へ進んだ。

「フリーは体力面で終盤に息が上がってしまう。後半になっても落ち着いて滑れるような体力をつけないといけないですね。最後までスピードに乗って滑れるように」

 11月中旬にはスケートアメリカ、年末には全日本選手権へと戦いは続く。オリンピック選考も佳境を迎える。

「勘違いかもしれないけど、昨日から足の状態がいいかなって。試合だから痛み止めを飲んでいますが、飲んでも痛いというのが続いていたんです。安心して滑れたのは、来週のスケートアメリカにもつながるかなって。全日本もできることを精一杯!」

 競技人生最後のNHK杯は合計168.27点で総合9位だった。満足できる数字ではないだろう。ミラノ・コルティナ五輪出場に向けた状況は甘くない。

 しかし、樋口は逆転へのきっかけを大阪のリンクでつかんだはずだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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