【フィギュアスケート】樋口新葉が痛みと不安のなかで見せた意地「やんなきゃ」「最後は気持ち」 (2ページ目)
【痛みと不安と対峙してきた日々】
11月7日、ショートプログラム(SP)の舞台に立った樋口は、実戦に向けてよく体をしぼっていた。彼女自身の内面は揺れていたはずだが、泰然自若に映った。それはひとつの才能で、胆力を感じさせるスケーターだ。
もっとも、心がどれだけ強くても痛みを抱えた体はついてこない。右足甲のケガは耐え難いストレスだった。ジャンプは着氷のたび、激痛が走り、乱れが出た。練習の回数を減らしたところが納得できないジャンプとなり、結局は回数が増え、痛みも増すという悪循環だった。
「やんなきゃって気持ちは大きかったです。ケガで痛くなったのは仕方ないんですけど、痛くなったのを理由にできないのが、自分のなかでは悔しくて」
樋口はそう言って乾坤一擲でSPに挑んだが、やはりジャンプは苦戦した。ダブルアクセルは成功も、3回転ルッツは2回転になり、コンボもつけられなかった。3回転フリップも回転不足の判定。ケガだけでなく、実戦からも離れていたことも影を落としていた。
「練習と試合は緊張が全然違うので......それに(9月の)木下カップの体調不良のことだったり、そこで滑った時の感じだったり、自分は本当に力を発揮できるのかって不安になってしまって」
そう語った樋口だが、不思議と堂々としているようにも映った。
「焦っているんですけどね」
彼女はそう言って、苦笑を浮かべる。
「焦ってもうまくいかないので、できること、やらないといけないことを考えながら、自分のベストを尽くせるように考えています。ただ、練習では無意識に怖がって変な方向に跳び上がっているんだろうなって。その緊張と変な感覚が合わさって、本番ではルッツが曲がっちゃいました。無意識に痛みをかばう動きをなくせるといいんですけど......」
SPの53.15点で10位は、思わぬ出遅れと言える。もっとも、北京五輪ではトリプルアクセルを成功させて4位と健闘し、団体でメダルにも貢献した実力者は意地も見せた。スピンはオールレベル4だ。
「スピンのレベルを取れたことが自分のなかで大きい。練習はしていましたけど、不安もあったので。ジャンプは失敗しましたが、おかげで50点台に上げられました。そこは自信を持って、フリーも滑れたらいいかなって思います」
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