「真央ちゃんや佳菜子ちゃんを『頑張ってね』と見送るだけでは......」鈴木明子、28歳での五輪出場の舞台裏 (3ページ目)
【熟成した演技を見せた遅咲きのスケーター】
28歳での2度目の五輪。団体戦を滑ってから10日後のSPは、両足小指に痛みがあるなかでの演技となってしまった。
「痛みであまり練習を積めていなかったので、不安がありました」と話す鈴木は、少し重い動きの滑り出しで最初の3回転トーループがダウングレードになるミス。次の3回転ルッツに2回転トーループをつけて連続ジャンプとし、スピンとステップもすべてレベル4にする粘りは見せたが、得点は60.97点と伸びずにSP8位発進となった。
翌日のフリーは、SP15位の村上と16位の浅田の次の組での演技だった。最初の3連続ジャンプをフリップからルッツに変更して滑り出し、次の連続ジャンプはセカンドが2回転になってしまう。
3本目の3回転ルッツはステップアウト。さらに後半の3回転フリップは転倒する苦しい流れになったが、粘りの滑りを見せて合計を186.32点にして8位を堅持し、五輪2大会入賞を果たした。
演技後に鈴木は、「できないこともあったけれど、今できる精一杯のことをやれたので、今はホッとしています」と話した。
「正直この年齢まで競技を続けるとは思っていませんでした。今は若くして出てくる選手も多いですが、遅咲きでもできるという気持ちが若い選手たちに伝わればうれしいです」
その1カ月後の世界選手権さいたま大会を最後に、競技生活を終えた鈴木。そのSP翌日に29歳を迎えた彼女は、若い頃から世界のトップに躍り出ていた安藤や浅田らと競い合うなかで、熟成した安定感のある演技を見せた。日本女子の世界での戦いを支える貴重な存在として、時に渋味もある輝きを見せてくれた。
終わり
<プロフィール>
鈴木明子 すずき・あきこ/1985年、愛知県豊橋市生まれ。6歳からスケートを始め、18歳の時に摂食障害を患うも復活を遂げ、2010年バンクーバー五輪8位入賞。2012年世界選手権3位、2013年全日本選手権優勝など数々の好成績を残す。2014年ソチ五輪に出場し、2大会連続8位入賞。現在は、プロフィギュアスケーターとしてアイスショー出演、振付師としても活躍する。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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